ドイツ・フランクフルト遠征記(冨永圭祐)

第12回ドイツ・ニッポンコネクション2012
『ホトホトさま』+プロジェクトDENGEKI・フランクフルト遠征記

この度、5月2日〜6日にかけてドイツ・フランクフルトにて開催された第12回ニッポンコネクションにて『姉ちゃん、ホトホトさまの蟲を使う』(大工原正樹監督)と、プロジェクトDENGEKIから『電撃』(渡辺あい監督)『わたしの赤ちゃん』(磯谷渚監督)が上映されました。また、拙作『乱心』も上映されました。
代表して、大工原正樹、渡辺あい、僕こと冨永圭祐が現地まで行って参りました。

・5月2日(曇り)
午前9時45分に成田空港集合。
僕は一切寝ておりません。確実に寝坊する自信があったからであります。
前日、偶然会った佐野真規(『お姉ちゃん、だいきらい』監督)、星野洋行(『電撃』キャメラマン)、中瀬慧(『正当防衛』キャメラマン)に「朝まで飲みましょう、僕が眠らないためにも」と人生史上最も自分勝手なお誘いをぶちかまし、つきあってもらいました。
お三方、本当にありがとうございました。

「他の二人もまさかオレがここまでの覚悟で臨むとは思うまい、ふふ」と集合すると、大工原、渡辺両名とも寝ていませんでした。「飛行機でちゃんと眠れるように」とのことでした。僕は敗北感に打ちひしがれました。僕は飛行機でのことなど微塵も考えていなかったのです。

何はともあれ、空港で人生初デジカメを購入してテンション上がり気味の大工原正樹と冨永圭祐、もともとかっこいいデジカメを持っている渡辺あいは飛行機に乗り込みました。ちなみに大工原正樹は金属探知機に見事引っかかりました。ドイツに持ち込もうとした黄金の魂に反応したようです。

フライト時間は約11時間。これは僕の休日の平均睡眠時間に相当します。つまり少し長いのです。我々は一度席に着くと二度と身動き出来ないかのごとく体勢を崩せませんでした。小柄な渡辺あいですら狭い状況であります。大工原正樹はウィスキーを頼みました。「寝酒かな…?かっこいいな」と思い、僕はビールを頼みました。

3人とも眠ろうにもうまく寝つけず、寝ているのか寝ていないのかお互いにさっぱり分かりません。次第に3人ともむくりと起きはじめ、モニターで映画を見始めました。
僕は『アーティスト』と『アジョシ』を見ました。大工原正樹は『ロボジー』と『アーティスト』、渡辺あいは『アーティスト』やオキサイド・パン作品(タイトル忘れました)を見ていたように思います。
二回目の機内食に、今話題の吉牛が出ました。我々は怒りを隠せませんでした。
こうしてJAL407便はそれぞれの思いを乗せてフランクフルトへ飛んでいったのです。

・5月2日(晴れ)・フランクフルト編

フランクフルトに着きました。天気予報とは打って変わって、現地は晴れでございます。
ほぼ定刻通り17時半ごろ到着。日差しが眩しいです。わくわくします。
現地のスタッフの方々が温かく迎えてくださいました。

それにしても渡辺あいのトランクはでかいです。でかいのでスタッフの方々が運んでくださいました。
おお、タクシーがベンツです!「これがドイツか」と3人は思いました。

会場までの送迎車が来ることが出来ず、電車で向かうことになりました。


ドイツでの初電車に心躍りました。



フランクフルト中央駅のかっこよさはまるで映画でございます。

ボッケンハイマー・ヴァルテ駅に到着。
会場であるゲーテ大学についた我々は開会式へ駆けつけました。

会場の広さと観客の多さに圧倒されました。真っ暗闇にスポットライト。雰囲気が出ます。
「これが海外映画祭か」と3人は思いました。


僕はバーカウンターでビールを頼みました。一番絞りかドイツビールを選べます。僕は「ラーデベルガー」と言いました。伝わらなかったので指さしました。会場では、飲み終わった瓶を返すと50セント返ってくるようです。瓶代を含めた代金をあらかじめ払っているのですね。
僕は生まれて初めて「ダンケシェン」と言いました。噛みました。

眠気を隠せない我々は、通訳や案内などのお世話をしてくれるオリバーさんにお願いしてホテルへ案内していただきました。
これがフランクフルトでの我々のアジト、ソフィエン・ホテルでございます。


疲れ果てた3人に、試練が待っていました。
ホテルは紹介サイトから予約し、代金も振り込んだはずなのですが、ホテル側がまだ引き下ろしておらず、「今払ってください」と言うのです。そんな馬鹿な。
仕方なく、大工原さんのクレジットカードで支払うことにしました。しかし、暗証番号がないと払えないというのです。そんな馬鹿な。
ドイツではそうらしいのです。大工原正樹は暗証番号を覚えていません。日本ではサインでOKだからです。渡辺あいをちらりと見ました。渡辺あいも暗証番号を覚えていません。二人は僕をちらりと見ました。僕はゆっくりと首を横に二回振りました。僕はクレジットカードを持ったことがありません。
オリバーさんに通訳してもらい、なんとかサインで支払えました。オリバーさん、本当にありがとうございます。

さて、30分後に再びロビーで集合の約束をして、やっとこさそれぞれの部屋へ落ち着きました。ところが、再び試練が待っておりました。
予約したのは、喫煙可能なシングルルーム2部屋と、禁煙のツインルーム1部屋だったはず。ところが、大工原正樹は部屋へついた瞬間異変に気づいたのです。「いいにおいがする。これは…間違いない!禁煙ルームだっっ」大工原正樹は部屋を飛び出し、階段を駆け下り、喫煙可能なツインルームにいる渡辺あいを呼び出してロビーへ向かいました。
しかしオリバーさんはすでに帰宅してしまっています。なんとか英語で伝えました。
「二人の部屋をとりあえず交換してくれ。数日後、渡辺あいの友人が来るから、その時になったら再び彼女をツインルームにして、もう一つ喫煙ルームを用意してくれ」
英語力に自信があるわけではありませんでしたが、大工原正樹の行動力でなんとか理解してもらえました。
その頃僕は、自室のベッドで寝転がってタバコをくゆらせておりました。
先ほどの二人のやりとりは全て、事実を基にしたフィクションです。多分、大体合ってます。

さて、再びロビーに集合した我々は、夜ご飯を食べに夜のボッケンハイマーへとくりだしました。
部屋へ入ってから集合までの短い間に、大工原正樹は荷物を全てバラし、快適に過ごせる部屋を作り出し、シャワーまで浴びてすっきりしておりました。
僕は寝そうになり、いかんいかんと眠気覚ましにタバコを吸うという行動を繰り返しておりました。僕にはバラすほどの荷物もありませんでした。
渡辺あいは寝てました。部屋に入ったその足でそのままベッドへダイブしたようです。
よく起きてきたなと感心しました。

夜の8時になっても明るいドイツの町も、さすがに暗くなってきました。
お店がことごとく閉まっております。ようやく見つけたトルコ料理屋で、夜食を取りました。


これで8ユーロ(800円ちょい)。安いです。もりもり食べました。ビールを飲みました。


再びニチコネ会場へ少し顔を出し、限界の我々はホテルへ帰りました。
僕はシャワーで失敗してトイレ兼洗面所を水浸しにしてしまいましたが、タオルで吸って眠いので寝ました。
おやすみなさい。