大阪シネヌーヴォ上映せまる!

『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』
2010年/49分/HDV

姉ちゃん、イヤな予感がするんだ、街に入った時から…


監督:大工原正樹
出演:長宗我部陽子 岡部尚 森田亜紀 高橋洋 光田力哉
脚本:井川耕一郎  撮影・照明:志賀葉一 録音:臼井勝 音楽:中川晋介

助監督:冨永圭祐 中島知香 渡辺あい
撮影助手:鎌田亮 佐野真規 黒須健 
照明補:広瀬寛巳  
照明助手:地良田浩之 松久育紀 今村修邦 立石逸平 
録音助手:清水裕紀子 川口陽一  
美術:原太一 内藤瑛亮 山形哲生 谷脇邦彦 
制作:光田力哉 佐本三国 穴原浩祐 笠原雄一 西出美紀  
主題歌「姉ちゃんのブルース」 
唄:長宗我部陽子(作詞:高橋洋 作曲:中川晋介 )
音楽協力:山根ミチル  
編集:渡辺あい 大工原正樹 整音:清水裕紀子
制作管理:山口博之 市沢真吾  
製作:映画美学校
宣伝協力:カプリコンフィルム(吉川正文)森宗厚子 名倉愛 星野洋行
予告篇制作:浜田みちる 松浦博直
チラシ・デザイン:船井伊智子
チラシ・ヘア&メイク:増田加奈
チラシ・スチール撮影:猪原美代子

<STORY>
蠱(こ)とは古代中国の呪術である。ひとつの器に小動物や昆虫を入れて殺し合いをさせ、最後に残った一匹には強い呪力が宿るという。
母の葬式を終え、かつて暮らした街をぶらりと訪れた妙子と治は、次第に心に巣食うバケモノ「あいつ」の幻に襲われ始める。
<解説>
過去、心に大きな傷を受けた姉と弟。二人は幼少を過ごした街に戻ってくる。その町並みは、二人の癒えぬ心と呼応するかのように諦め枯れ果ててしまっている。「アイツ」の存在。それは治りかけの傷口に似ている。我を忘れてその醜さを凝視してしまう。治りかけとわかっているのに掻きむしってしまう。二人には、傷口から血が吹き出そうとも、その行為を止めることが出来ないのだ。その同じ「蠱」に喰われた傷だけが、二人の絆になっていることが、どうしようもなく悲しい。しかし、物語は最後に救済を与える。それは血だらけになりながらも、自力でつかみ取った「生」に他ならないだろう。

 本作は『赤猫』(04)の大工原正樹が5年ぶりに撮り上げた新作中篇。脚本は、寡作ながらその質の高い仕事ぶりが注目され続けている井川耕一郎(『西みがき』・監督、『赤猫』・脚本)。撮影・照明は、一般映画と成人映画を自在に往還し、自主映画もコンスタントに撮り続けているベテランの志賀葉一。録音は、こちらも商業映画から自主映画まで幅広く活躍する『接吻』(監督:万田邦敏)・『害虫』(監督:塩田明彦)の臼井勝。音楽には、映画のサウンドトラック初挑戦のミュージシャン・中川晋介。

 主演は、存在感のある女優としてベテランから若手まで多くの監督に愛され、また、コアな邦画ファンからも熱心な支持を得ている長宗我部陽子(「恐怖」「行旅死亡人」)と、「東京乾電池」の舞台にも立つ注目の若手俳優岡部尚(「PASSION」「実録 連合赤軍」)。二人が憎しみの輪廻にはまり込む姉弟を繊細に印象深く演じている。共演は、話題作『へんげ』(監督:大畑創)主演の森田亜紀(『赤猫』)と、監督・脚本最新作『旧支配者のキャロル』がオムニバス映画『コラボ・モンスターズ!!』の一本としてオーディトリウム渋谷で絶賛公開中の高橋洋(『恐怖』監督・『リング』脚本)。高橋は、主題歌「姉ちゃんのブルース」の作詞も担当。


<コメント>
 たったひとつの仕草、たったひとつの身振りが見えるはずのない過去や記憶、情念や執着を私たちに突き付けてくる。映画の冒頭、母親の遺骨を散骨する姉の身振り、かつて足繁く通った映画館のロビーでありありと記憶を再現しようと体を動かす弟の身振り、残された住居の庭先から、あの品物を取り出すときの手付き。ひとつの身振りがもうひとつの身振りを引き寄せ、響き合い、まるで暗いトンネルの中で叫びと響きが反響し合うが如くに、過去に呪縛された人間たちの苦悩と決別の物語を紡ぎ出していく。そこにこの映画の見事な蠱惑がある。
塩田明彦(映画監督・『どろろ』『カナリア』『害虫』)


 大工原さんの映画を見ていつも思うのは、「上手いなあ」ということです。『未亡人誘惑下宿』や『風俗の穴場』のように多くの登場人物が一堂に会する集団劇を、まるで撮影所出身の職人監督のような手さばきできちんと演出しきる人は今の日本に大工原 さんしかいないのではないでしょうか。これは大げさな賛辞ではなく、その2本を見れば誰もが納得するほかない事実です。『赤猫』以後は上手さに鋭さが加 わって、演出や編集に無駄がなく、ものすごい切れ味とでもいったものを感じます。例えば『ホトホトさま』の開巻のカットの連なりは、それだけでも上手さの みが実現する映画的な充実に満ちていますが、その一連のカットに差し挟まれるバックミラーに映った姉の顔のカットは、そこにバックミラーの顔の画面を挿入 することを選択したことの上手さもさることながら、この画面が、映画の中盤で今度はバックミラーに映った弟の顔の画面と呼応するように仕組まれていて、し かもその画面が物語に決定的に不穏な空気を漂わせるきっかけともなるという憎たらしい構成で、そういうことを今の大工原さんは冷静にやってのけるわけです。大工原さんの映画を未見の人は、なにはさておき、この機会に絶対に見るべきです。
万田邦敏(映画監督・『接吻』『UNLOVED』)


「姉ちゃん、ホトホトさまの蟲を使う」は、混乱の平成に狂い咲きするハードセンチメンタルな姉弟の愛の物語。才人井川耕一郎の描く日本の土着と風土に根ざした扇情的な復讐譚を、確かな技術で映像に焼き付けた大工原正樹の「腕前」が冴え渡る。これぞまさしく「日本映画」の大傑作。是非劇場で!
佐々木浩久(映画監督・『発狂する唇』『血を吸う宇宙』)


姉弟ものに弱い僕は、見ていて泣きそうになった。ホラー映画というかなんとい うか不思議な映画…でも、感動しました。傑作だと思います。
屑山屑男(「TRASH-UP!!」編集長)

姉弟映画というジャンルがあると思う。
そのスジには、私もちょいと自負があるが、
大工原監督の演出は、さすが、舌を巻いた。
この姉さん、相当のんきだ。
そして、頓知がきいている!
七里圭(映画監督・『眠り姫』『のんきな姉さん』)


『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKI

■2012年6月2日(土)〜6月8日(金)  
■大阪シネ・ヌーヴォ 連日18:40〜/20:35〜の2回上映
■料金 当日:1400円 前売り1200円

虐待の記憶に苛まれる姉弟の2日間の再生の旅を描いた話題作『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』は、『赤猫』(04)の大工原正樹監督が5年ぶりに撮りあげた新作映画。
存在感のある女優として、ベテランから若手まで多くの監督に愛され、映画やドラマで活躍する長宗我部陽子の新たな魅力に気づかされる主演作としても評価が高まっている。

また、大工原正樹監督が過去に撮った短編2本に加え、大工原監督が未だ日の目を見ないインディーズの力作として注目した7本の短編が『プロジェクトDENGEKI』として同時上映される。

*第12回ドイツ・ニッポンコネクション2012 正式招待作品
(『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『わたしの赤ちゃん』)

<プログラム>
Aプログラム『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使うん』『電撃』
Bプログラム『純情No.1』『赤猫』『ちるみの流儀』
Cプログラム『お姉ちゃん、だいきらい』『静かな家』『正当防衛』『わたしの赤ちゃん』『BMG』

*6月2日(土)18:20の回のみオマケ上映(7分)あり!
6月2日(土)  18:40〜(Aプロ)/20:35〜(Bプロ)
6月3日(日)  18:40〜(Aプロ)/20:35〜<休映>
6月4日(月)  18:40〜(Aプロ)/20:35〜(Cプロ)
6月5日(火)  18:40〜(Aプロ)/20:35〜(Bプロ)
6月6日(水)  18:40〜(Cプロ)/20:35〜(Aプロ)
6月7日(木)  18:40〜(Bプロ)/20:35〜(Aプロ)
6月8日(金)  18:40〜(Cプロ)/20:35〜(Aプロ)

シネ・ヌーヴォHP http://www.cinenouveau.com/index.html