『BMG』へのコメント(万田邦敏)


(『BMG』上映は9/29,10/7)

映画監督の万田邦敏さんからプロジェクトDDENGEKIで上映の『BMG』にコメントを頂きました。


何やら怪しげな男が勧める怪しげな仕事を引き受けた女に向かって、その怪しげな依頼者がささやく。「もし仕事に失敗したら、あなたのからだは世界に散り散りになる」。生身のまま世界に散り散りになってしまうからだとは、いったいどんななんだろう! この強烈な疑問符と共にこの映画は始まる。そして物語の当然の流れとして、女は仕事をしくじる。しかし彼女のからだは散り散りにはならない。これも当然の流れとして、彼女を救う男が現れるからだ。この男は彼女との偶然の出会いを、運命の出会いと勝手に解釈して思わず鼻血を流す間抜けだが、ワンカット・ロングのまま唐突に流れ出す鼻血の画面は、彼女との出会いで今からだが散り散りに解体されつつあるのはこの男だということを告げている。そして一度解体された男は、ラストにとんでもないヒーローとして再生する。ほとんど奇跡としか言いようのないそのラストは必見だ。


万田邦敏(映画監督『接吻』、『UNLOVED』、『ありがとう』など)