『わたしの赤ちゃん』における◯◯◯について (高橋洋)


(「わたしの赤ちゃん」は9/27.10/7に上映)

あえて◯◯◯と伏せ字にしたのは、それがクライマックスの階段シーンで起こる重要なアクションと関わっているからで、ネタバレしたくないのである。
 うーん、それは『わたしの赤ちゃん』の準備中、シナリオに書かれているアクションをどうやって成立させるかスタッフ一同が悩んでいる時、うっかり僕が「それって◯◯◯みたいだよね」と言ってしまったのである。おまけについ調子に乗って、その◯◯◯の映像を見せてしまったりしたものだから、いや、今時何でも映像で見られてしまう時代がはらむ危うさに対して、僕は無自覚だったと反省している。完成した映画を見たら、そこにはどう見ても◯◯◯としか思えないものが…。僕は深く動揺した。
 後で聞いたのだが、『わたしの赤ちゃん』は上映が終わった後まで笑いが止まらなくなる人が一部にいるみたいで、たぶんそれは◯◯◯がとどめを刺しているのだ。ある特定の世代にだけ起こることに決まってるので、他は知らんが。
 現在、フィクション高等科で企画開発中の監督、磯谷も色々思うところがあったらしい。自分のトゥーマッチ性を、単なるトゥーマッチではない鋭さにまで如何に高めるか。
 僕はちょっと心配になった。あまり考え過ぎると、彼女本来の魅力である荒々しさが萎縮してしまうのではないか。
 しかし、苦悩の果てに上がって来たシナリオは「あなたは無精子症よ!」みたいな台詞の連発であった…。
 いったい彼女は何を悩んでいたのだろうか?

高橋洋:映画監督・脚本家(『旧支配者のキャロル』『恐怖』『リング』他)