『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』へのコメント(小原治)


ポレポレ東中野の小原治さんより『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』にコメントを頂きました。


聞いたこともないのに知っている主題歌に心奪われ、個別の時間と空間の玉突き事故に興奮し、カルピスという事実がまた味わい深いビンの虫に心が蠢きました。一人欠けたら自分もなくなる究極の三角関係にも見えました。姉弟映画でありながら。とにかく見所満載の映画。
中でも一番惹かれたのは長宗我部さんの声。例えば僕が子供の頃見ていた「怪奇モノ」でも、ユーレイやバケモノが怖いのではなく、その理不尽な世界でも生きていくしかない主人公の背負う性(サガ)が、余生まだ永い子供の僕には絶望的だったのですが、彼女の声には同質のトーンを感じました。背負っている感じ。劇中の治さながら僕も記憶を振り返って、その絶望的なトーンを昔の自分に見つけたわけです。というよりもこの映画、2回目見たときには「アレ?」ってなったんです。事態が深刻になるにつれ、むしろオカシくなってきて、「アレレ?」ってなったんです。エンディングが流れた頃には後の祭りというか、見終わってしまえばなんだかケムに巻かれたみたいに。あのチャーミングな姉ちゃんに。映画をつかまえようとした僕が、かえって振り回されていただけかも。そう思うと、フと嬉しくなります。
僕にも3つ上の姉ちゃんがいます。そろそろ相手見つけて下さい。

小原治(ポレポレ東中野