『わたしの赤ちゃん』よし、このシナリオで行こうと思ったとき(磯谷渚)

出来上がった作品は、ザッツ姉妹ものといった感じなのですが、最初に何をやろうか考えていたときに、主要人物を姉妹にしようとは思っていませんでした。

最初に考えたのは、「死産した保母さんが子供を失った悲しみでだんだん精神を病み、保育所に預けられた子供を思わず盗んでしまう」といったお話でした。ですが、シナリオを描いていくうちに子供を失った喪失感を描くことに自分自身あまり興味を持てないことがだんだんわかりました。「他人の子供を盗む」のは、喪失感で思わずというのではなく、相手のことを恨んでいたのかもしれない。だとしたら相当な恨みがあるんだろうなあ。長年恨んできたんだろうなあ。小さいころからきっと恨んでたんだよな。恨むべき相手は生まれた瞬間からすでに恨まれていた・・・生まれた瞬間から恨み恨まれる関係・・・姉妹だな。と思いました。

恨んで恨まれて、恨まれたことを恨んで恨まれて、恨み合いが表面化するのを恐れているような、望んでいるような。どうしようもない恨みの共依存関係の姉妹。そんなこんなでいい大人になっちまって、やっと来たるべき時が来たのだ!そんな姉妹の関係がベースになっていったような気がします。

磯谷渚(監督:『わたしの赤ちゃん』)