『電撃』渡辺あい監督

『電撃』2011年/HD

「姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う」と併映のプロジェクトDENGKIにて公開(9/24,10/2,10/5,10/8)



「愛するタカヒロが浮気をしているーーー」。けれどミチコは、いつかタカヒロの愛を取り戻せると信じていた。「だって、わたしのお腹にはあの人の子が宿っているのだもの…」。ミチコは寡黙に、タカヒロの身の回りの世話を焼く幸せを噛みしめていた。しかしある日、タカヒロの妹と称する少女が現れ居候をはじめた日から、ミチコの愛の生活が音をたてて崩れ始める……。

渡辺あい、本気の処女作。この時代錯誤な設定に「リアル」をもたらしているのは、間違いなくヒロイン・美輪玲華の圧倒的な存在感だろう。美輪が演ずるミチコは劇中ある職業を身に纏うのだが、その職業がギミックと見えてしまえば失敗のこの映画で、彼女は登場の瞬間からそれが紛れもない現実であることを、そのフィクション性の高い肉体と佇まいで表現してしまう。そして、美輪の時代錯誤を際立たせるはずの波多野桃子も、一見今の少女風を装いながら、現代のそれとは真逆の「速い」芝居で美輪の存在感にたち向かう。そして、二人の女に挟まれる安藤匡史のストイックな受けの芝居が絶妙なアンサンブルを生み出す。これだけ配役に成功している映画が面白くないわけがないのだが、この三人の想いが錯綜するドラマは、大胆な省略をそうとは気づかせないしっとりとした情緒も絡ませながらクライマックスへと向かっていく。いくつもの謎を残しながら。渡辺あいは、ここが映画的な見せ場だというポイントを逃さない。特に3つあるラブシーンの演出は見るものをハッとさせ必見。つまり、運動神経がいいのだ。



出演:美輪玲華、安藤匡史、波多野桃子


監督:渡辺あい
脚本:冨永圭祐 渡辺あい
制作:地良田浩之 笠原雄一
撮影・照明:星野洋行
録音:川口陽一 中瀬慧 清水絵里加    
美術:山形哲生 原太一
衣装:坂本博之
スクリプト:中島知香
助監督:冨永圭祐 内藤瑛亮 山形哲生 佐野真規
撮影助手:神保卓也
照明助手:芳士戸一成
スタントコーディネート:根本大樹
スタント:イチコ   
編集:地良田浩之 渡辺あい
整音:中瀬慧
音楽:上松翔一