『電撃』が奥渋谷MOVIE NIGHTS TRASH-UPLINK!!にて上映!
プロジェクトDENGEKIより『電撃』が奥渋谷MOVIE NIGHTSにて上映されます。
奥渋谷MOVIE NIGHTS(http://www.uplink.co.jp/factory/log/004503.php)
TRASH-UPLINK!! 番外編 「ザ・グレイテスト・ヒッツ」
6/30(土)(上映作品)
『電撃』
『ENCOUNTERS』
『スーパーナーバス、カモンビーナス』
(LIVE)
HADA
開場19:20
上映 19:30
終了予定時間 22:00
会場: 渋谷アップリンクファクトリー http://www.uplink.co.jp/factory/log/004503.php
料金:800円
TRASH-UP HP(http://www.trash-up.com/news/20120626033557.html)
『電撃』は久しぶりの東京上映です。
見逃していた方はぜひ渋谷へ!
いざ名古屋シネマテーク上映情報!
名古屋シネマテークにて、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKI<名古屋セレクション>が7/14〜7/20に上映されます。
連日20:50より一回の上映です。
7/14&16&18&20
『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』
『静かな家』(計79分)
7/15&17&19
『私の赤ちゃん』
『純情 No.1』
『電撃』(計79分)
(他、覆面作品上映も予定?!)
入場料(当日券のみ)
一般1500円 大学生1400円 中高生・会員1200円
※期間中リピーター割引 一般・大学生200円引き
名古屋シネマテークHP
(http://cineaste.jp/)
名古屋をはじめ、愛知、東海のみなさま、この機会に『ホトホトさま』+プロジェクトDENGEKIを是非お見逃しなく!
どうぞよろしくです。
ドイツ・フランクフルト遠征記4(冨永圭祐)
・5月5日(晴れ後雨)
おはようございます。
新世代映画作家・僕です。
パンを食べようと思いましたがカッチカチでした。歯が立ちません。
ロビーへ降りると、誰もいません。
今日は10時からステファン・ホールさん(『おんなの河童』プロデューサー)のワークショップが行われます。
昨晩、各部屋へ分かれる前にちらっと言ったのですが、みんなボーっとしてました。
まぁ、来ないと思ってたけどねっ!と僕は鍵をロビーに預けました。
しかしどうしたものか。
今回の旅では携帯での連絡が取れません。渡辺あい以外は携帯を使える措置を取っていないのです。勝手に一人で行動すると、確実に昨日のように夜まで二度と会わないでしょう。いや、ひょっとしたら二人とはもう一生会えないかもしれません。
閃きました。
僕は手紙を書きました。
それを二つ折りにし、大工原正樹の部屋のドアの隙間に挟んでおきました。これでドアを開ければポトンと手紙が落ち、確実に大工原正樹は手紙を読むという寸法であります。
ドアの下の隙間から手紙を滑り込ませてもよかったのですが、大工原正樹のことです。気づかずに手紙を踏んづけ続け、ドイツから帰る頃にくしゃくしゃになった手紙が発見されるということが容易に想像できます。
出発しました。
朝はとても清々しいです。
カフェでコーヒーを買い、ゲーテ大学に着きました。
参加する監督は僕以外に、隈元博樹監督(Sugar Baby),眞田康平監督(しんしんしん),
飯塚貴士監督(ENCOUNTERS)でした。
テーブルにはコーヒーとプレッツェルが用意され、朝パンを食べ損ねた僕はがっつきました。
ステファンさんは、『おんなの河童』を引き合いに出しつつ、海外映画祭とはどういう場なのか、自作を売り出すためにはどういった道があるのか、ドイツではどういう日本映画が見られているのか、など話してくださいました。
こちら側は、日本の映画界に感じる現状を話しながら質問していきました。『おんなの河童』についても色々聞くことが出来ました。僕は大好きな作品です。
話が白熱したころにそっと入り口のドアが開き、皆が振り向くと大工原正樹が現れました。
ワークショップが終わると、各々作品のDVDをステファンさんにお渡ししました。
大工原正樹はフランクフルト中央駅を見てみたいというので、行ってみることにしました。
渡辺あいとMさんには声をかけてこなかったようなので、本日は別行動です。
今回の旅で唯一、空が曇りました。
ヨーロッパの町並みは曇り空も似合います。
とういことで、ボッケンハイマーのヴァルテと一緒に。
ちなみに後に教えていただいたことなのですが、ヴァルテ(Warte)は後ろの塔のような建築物のことで、争いのあった時代に敵軍をせき止めるための壁のようなものの名残らしいです。今では各地で塔の部分だけが残されて、カフェなどとして利用されています。(でしたっけ?大工原さん、渡辺さん)
フランクフルト中央駅に着きました。
大工原正樹は円をユーロに換え、いざ駅を出ましたが、どこに行っていいものやらさっぱり分かりません。フランクフルトはドイツ金融の中心らしいのですが、見た感じ中央駅はビジネス街っぽいです。
とりあえず、駅近くにある見るからに怪しい日用品店(?)に入りました。
安いです。
大工原正樹は鬼安のTシャツに心奪われておりました。よく分からない単語がプリントされております。
ここで僕は運命的な出会いをしました。
こいつです。中国製の水筒でございます。
かっこいいー!
僕は一目で心を奪われました。
ボディには「思宝」と書かれています。意味が分かりません。
この機能美とデザインを見事両立させた水筒、お値段は25ユーロ(2,500円くらい)でございます。
僕は自分へのドイツ土産に、この中国製の水筒を買うことにしました。
今回の旅で一番高い買い物をしてしまいました。
雨が降ってきました。
トラム(ちんちん電車)に乗ってみたいのですが、地下鉄以上にさっぱり分かりません。
我々が乗ろうものなら、見たこともない町で降ろされ、二度とボッケンハイマーへ帰れなくなる可能性もあります。
結局地下鉄で戻ることにしました。
中央駅構内で本屋さんに立ち寄り、日本の友達へのお土産を買いました。
大工原正樹は時計屋さんで10ユーロの腕時計を見つけ、「試しにこれ買ってみるわ」と買いました。買ってからボディ裏を見るとMADE IN JAPANと書いてありました。
ボッケンハイマーに戻ってきた我々は、腹ごしらえをしにファストフード店に入りました。ドイツの代表的大衆食らしいCurrywurst(カリー・ヴルスト)があったので食べてみました。
大工原正樹は、見た目カレーライスのような、ピラフみたいなのにハッシュドビーフみたいなのがかかったみたいなのを食しました。
味はカレーでもハッシュドビーフでもなく、食べたことのない味ですが、美味しかった。
大工原正樹が店員に尋ねたところによると、ここはアフガニスタン料理の店らしいです。
アフガン料理、美味しいです。
その頃、渡辺あいとMさんは、レーマーでおしゃれなカフェへ行き、さらには我々が念願かなわなかった市場のソーセージを食べていたというのです!
昨日の料理で胃をやられて体調不良と聞き、心配したのですが、女性というものははかりしれないものです。
さて、会場に戻った我々は、NIPPON VISIONS部門で、中島信太郎監督『ジャックの友人』と、山崎樹一郎監督『ひかりのおと』の二本立てを見ました。
『ジャックの友人』は、シネドライヴ2012で拙作『乱心』と同プログラムで上映された映画です。中島監督は面白い野郎です。彼にもドイツに来てほしかった。
厳格に切り取られた8mmの映像と、音の演出について考え抜かれた遊びにあふれた映画です。3回目の鑑賞ですが、僕はこの映画が好きです。
一方、『ひかりのおと』は岡山を舞台にした酪農家家族の映画です。
自分がみたことのない風景、牛、実感したことのない世界、苦悩を見せてもらいました。
こういう体験は映画ならではの楽しみだと思いました。
『ひかりのおと』は、このニッポン・コネクション2012でNIPPON VISIONS AWARDを受賞しました。
ちなみに監督の山崎樹一郎さんは、6月2日〜6月8日と『ホトホトさま』+プロジェクトDENGEKIを上映していただいた大阪シネ・ヌーヴォの山崎支配人の弟さんであります。
おめでとうございます!
その後、さらにNIPPON VISIONS部門 眞田康平監督『しんしんしん』を見に行きました。
眞田監督は、作品において何よりも物語を重視していると言っていました。
『しんしんしん』は、テキ屋で生計を立てる疑似家族が家を失い、各地を転々としながらテキ屋をやっていくというロードムーヴィーでした。出演者は、石田法嗣、佐野和宏、洞口依子、神楽坂恵など、そうそうたる面子。疑似家族に当然のように訪れる破綻、そこからの希望までを堂々とした演出で描ききったクオリティの高い作品でした。
最初にスクリーンに映像が映し出された時、まずスコープサイズなのにびっくりしました。
んで、映像めちゃくちゃキレイです。キャメラはRED ONEだそうです。うらやましい!
そのあとの1,2時間ほど、僕には記憶がありません。
一体、どこでなにをしていたのでしょうか?
もう一度言いますが、確か渡辺あいは胃をやられて…
22:30
さて、いよいよ拙作『乱心』の上映でございます。
時間的にはかなり不利かも、と思っていましたが、
『Sugar Baby』の隈元監督(左)、キャメラマンの佐藤舜さん(右)
舞台挨拶を終え、『Sugar Baby』から上映が始まります。
こちらもシネドライヴ以来二度目の鑑賞でした。
隈元監督自身が演じる自主映画監督兼俳優の主人公は、撮影をすっぽかして帰郷します。かつて炭鉱町だった故郷で、主人公は失われた産業と廃れつつある映画に触れ、放浪していきます。
ドキュメンタリーとフィクションの境目のあいまいさが観客を戸惑わせながらも作品へ引き込んでいきます。主人公の知的にふるまいながらすっとぼけたキャラクターは、監督が自分自身を客観的に見た姿でしょうか。だからこそ最後のシーンがとてもいいです。
いよいよ『乱心』の上映となりました。
お客さんは若干減ってしまいましたが、緊張します。正直、自分の上映中の記憶はあまりございません。一瞬電気がつきかけるというトラブルがあったことだけ覚えております。
あとはあっという間でした。
上映が終わり、Q&Aとなりました。
『乱心』については、ATGや70年代の日本映画に通じるものを感じるが、影響を受けているのだろうか、という質問がありました。
内心どっきんこです。
ATGはあまり意識していませんでしたが、恐らく影響を受けた映画は神代辰巳監督の『地獄』(1979)でした。
ある車のシーンで、ヘッドライトの光が6つに反射していてとても印象的だったのだが、どうやって撮影したのか、という技術面の質問もありました。それに関しては、実は偶然でした。キャメラを置いた位置の関係で、レンズに反射した光が6つに分かれて映ってしまったのですが、作品の世界観にマッチしていてよかったと言ってくださいました。
そういえば、大阪で上映した時に自分の母親も同じ部分に言及していました。
思わぬところにお客さんが反応しているのを実感できるのが上映の醍醐味であります。
トークも終わり、会場を出ようとしたところ、年配の女性のお客様お二人に呼び止められました。
「あなたは『乱心』の監督?」
「あ、そうです」
「上映前の舞台挨拶で『緊張している』と言っていたけど、緊張する必要なんかないわ。あなたの映画は素晴らしかった。物語に重みがあって、役者の印象的な表情も捉えられていてとてもよかったわ」
感無量でございます。
出演者のことについて触れていただけるのが、やっぱり一番うれしいです。
握手をしました。「ダンケシェン」と5,6回は言いました。
サインもしました。僕の字は某猟奇殺人者の字にそっくりだと評判ですが、がんばって書きました。
夜も12時を過ぎ、大工原正樹、渡辺あい、Mさんは先にホテルへ帰りました。
僕は隈元監督や眞田監督、飯塚監督、本田隆一監督たちとそのままゲーテ大学で打ち上げました。
初めて地下に行ってみたら、カラオケが行われております。あんまり上手くないレッチリやレディオヘッドが聞こえてきます。恐らくゲーテ大学の学生たちでしょう。めちゃくちゃ盛り上がってます。楽しそうだ。
普段この場所は大学のなんなんだ?
聞くと、ドイツにはほとんどカラオケもないので、こういう機会があるとめちゃくちゃ盛り上がるのだそうで、カラオケ慣れもしていないから上手い人もあまりいないのだそうです。
そこで「日本のカラオケとは」をテーマに話が盛り上がりました。
トイレへ行くついでに一階のクラブへふらっと立ち寄ってみました。
普段はクラブが苦手なのですが、ここがフランクフルトでニッポンコネクションで酔っているからなのか、僕は一人で激しく慎ましやかに踊りました。
2,3分で疲れて地下に戻りました。
その後ルーニー・マーラとヴィルジニー・ルドワイヤンのかわいさについて語りつくし、ホテルに戻ると朝5時でした。
おやすみなさい。
ドイツ・フランクフルト遠征記3(冨永圭祐)
フランクフルト遠征記3
・5月4日(晴れ)
おはようございます。僕ですよ。
日本にいる時より健康的に生活しております。
ちゃんと午前中に起きてます。
にも関わらず、日に日に疲れがたまっております。
今日は各自朝食をすませてから集合するように。との大工原総司令の仰せの通り、
昨日買ったパンをむしり、チーズをかじり、トマトにかぶりつきました。
赤い洋梨がめちゃくちゃうまいです。
渡辺あいとロビーで集合すると、またもや総司令が来ません。
聖闘士(セイント)に同じ技は二度通用せん!と我々は勢いよくテラスに飛び出しました。
大工原正樹はやはり優雅にタバコを吸っておりました。
出発でございます。
今日は、午前10時からニッポン・コネクション公式行事に参加です。
フランクフルト市内観光ツアー。ニチコネスタッフや監督たちみんなで観光。
これは楽しみです。
ゲーテ大学近くまで来た時点でまだ9時30分。
大工原正樹曰く「朝はコーヒーを飲んだ時に始まるもんだ」
ということでSUBWAYでモーニングコーヒーを飲むことにしました。
時間が近づいてきたのでゲーテ大学へ向かいました。
10時かなりちょっきりに着きそうです。完璧すぎます。
朝の大学は、昨夜の喧騒が嘘のように静かです。
誰もいません。
ニチコネのスタッフもいません。
おかしいですね。
「ああっ」
背後で渡辺あいが叫びました。
「どったの?」と、総司令。
渡辺あいはスケジュール表を見てわなわなしております。
覗き込むと、スケジュール表には9時30分フランクフルト中央駅集合と明記されておりました。ここから電車で二駅です。
○なぜ、10時から観光ツアーと聞いて、10時に会場に集合すればいいと勝手に思ったのか。
○なぜ、3人ともがそう思ったのか。
○なぜ、誰一人一回もスケジュール表を見ておらんのか。
問題点はこの3つに絞られます。
慌ててオリバーさんに電話をしますが通じません。
とりあえずフランクフルト中央駅に向かうことにしました。
ひょっとしたら、誰かスタッフの方を残してくれているかもしれない。
地下鉄に乗り込みました。
気持ちが焦ります!
しかしおかしいのです。とっくにフランクフルト中央駅に着いてもいいはずなのですが。
お、レーマーに着きました。(会場から4駅目)
要するに乗り過ごしました。
大工原「二人とも駅確認してなかったの?」
濡れ衣でございます。
折り返そうと降りたとき、オリバーさんと連絡が取れました。
みんな観光中で、今レーマーにあるゲーテ博物館にいるとのことです。
もうお気づきかとは思いますが、僕がこのことを見越してフランクフルト中央駅で二人に「降りましょう」と声をかけなかったのは言うまでもありません。
地図を頼りにゲーテ博物館へ到着し、合流することが出来ました。
「いやぁ、やっちまいました。ふふふ」と3人はさりげなく輪の中に入っていきました。
あほ丸出しです。
遅れて合流したため、本当にさーっと見てまわることになりました。
そのあと、有名なソーセージ屋さんのある市場へ。
ここ、もっとゆっくり見たかったです!後日お土産買いに寄ろうと誓いました。
マイン川を通る橋を渡り、たどり着いたのは映画博物館。
スクリーン式の映画が誕生する以前の原型になったおもちゃやキネトスコープからCG技術まで、たくさんの展示で楽しませてくれます!ここももっとゆっくり見たかった。
ルキノ・ヴィスコンティ監督『ルードウィヒ 神々の黄昏』(日本初公開時タイトル)でロミー・シュナイダー(エリザベート役)が着た衣装。豪華です!
H.R.ギーガーのエイリアンが保管されております!撮影に使われたエイリアンの展示は世界各地に結構あるそうですが、ここのは唯一、人が中に入る仕様(いわゆる着ぐるみ)だそうです。頭蓋骨が透けているこのデザインは恐らく一作目リドリー・スコット版です。かっこよすぎます!
アルフレッド・ヒッチコック「サイコ」某シャワーシーンの画コンテ!
フリッツ・ラング「メトロポリス」のスコア。めっちゃかっこいいです!
個人的にうれしかったフォルカー・シュレンドルフ「ブリキの太鼓」太鼓
楽しかった!
みなさんお腹が空いてきたのでレストランまで移動です。
レストランに着きました。
こちらの料金はフランクフルト市が払ってくださるとのこと。
肉です。僕は肉が食べたいです。
大工原正樹と冨永圭祐は牛の肩肉を頼みました。
フランクフルト名物のソースがかかっております。
渡辺あいは豚足料理を頼みました。コラーゲンもりもりです。
「オレは腹が減ってるんだ。少しくれないか」
「何言ってんすか。馬鹿じゃないすか」
フランクフルト名物アプフェル・ワインでございます。
水(炭酸入り)で割って飲みます。フランクフルトではビールより一般的らしいです。
コップが空になるとどんどんついでくれます。結果、酔います。
ドイツ料理恐るべしです。
一口目はおいしくて感動したのですが、量が半端じゃございません。
二郎のラーメン増し増しをぺろりとたいらげるぐらいじゃないと食べきれないでしょう。
あえなく3人とも撃沈し、残した分を持ち帰ることにしました。
そういうサービスが出来るようになっているようです。
食べきれる前提じゃなかったようです。
レストランを出た我々は、皆さんと別れてレーマー駅までぶらぶらと歩くことにしました。
「冨永さん、おならしました?」
渡辺あいが不意に言いました。
「何を言ってるんだねチミは。大工原さんに決まってるだろう」
「ん?俺こいてねぇよ?」
「渡辺さん、その袋かしてみ?」
残した豚足の入った袋を受けとり、においを嗅ぎました。
「グギギ…」
完全に濡れ衣でございます。
マイン川まで戻ってきました。
現地の人たちが川沿いでくつろいでいます。
食い疲れた我々も草の上に寝転がりました。
大工原「空が広くて気持ちいいぞぉ。渡辺さんも寝転んでみなよ」
会場まで戻ってきました。
これから大工原正樹と渡辺あいは取材です。
フランスで映画サイトの記者をやっている方が興味を持ってくださったらしく、取材をしたいとのことでした。
僕は外で隈元博樹監督(Sugar Baby)や眞田康平監督(しんしんしん)と話しながら待っていることにしました。
したのですが、数分後、隈元監督はホームステイ先で用事があるらしく帰っていき、眞田監督は映画見るからと言って会場に入っていきました。
ぽつねんと一人になりました。
バーカウンターでラーデベルガーを頼み、NIPPON CINEMA部門会場へ向かいました。
本田隆一監督『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』を見ました。
竹之内豊と水川あさみの新婚夫婦は、結婚前から長い間同棲していたためなんだかすでにまんねり気味。そんな二人が出かけた新婚旅行はどうやら地獄だった。
「コメディやってみたかった」とノリノリだったらしい竹野内豊さんと素の魅力満載の水川あさみさん夫婦がとてもかわいいです。恋愛通り越して友達みたいになっちゃった二人のやりとりにニヤニヤしちゃいます。
地獄を案内してくれる青い人(劇中決して「鬼」とは言いませんが、恐らく元青鬼です)の橋本愛さんがこれがまたかわいいんです。全身真っ青で誰だか分かりませんがかわいいです。
「おれは橋本愛の一番かわいい表情を撮った」と豪語する古澤健監督の『Another』も楽しみになってきます!
一方その頃、大工原・渡辺両名は100分に及ぶ取材を受けておりました。
フランスの記者は自国で廣木隆一監督のレトロスペクティブを計画中らしく、大工原正樹には廣木監督のことまで根掘り葉掘り聞いてきました。
恐るべきことにこの記者、大工原正樹が廣木隆一監督の『菊池えり 巨乳責め』『ザ・折檻2』で助監督だったことまで知っていたのです。
「こいつはマニアだ」大工原正樹は思わず思いました。思わず思うってなんか変ですね。
記者は『電撃』をかなり気に入っているらしく、「あなたは幽霊映画にとても造詣が深いようだが、あなたのホラー遍歴を聞かせてほしい」と渡辺あいに聞きました。
しかし残念ながら渡辺あいにホラー映画遍歴などございません。
戸惑う渡辺あいを自分の目で見れなかったのがわたくし心残りであります。
(取材してくださった:Guillaume Boutigny ホームページ:www.nihon-eiga.fr)*取材記事をアップしてくださっています。他にも『死ね!死ね!シネマ』篠崎誠監督の記事なども。
一方一方その頃、僕はラーデベルガーをおかわりしていました。
発音はすでに完璧です。
時間は7時を過ぎました。二人の取材はとっくに終わってるでしょう。
まぁ会場ここぐらいだしどっかで会うだろぐらいに考えてましたが、全く会いませんでした。
ということで、次はNIPPON VISIONS部門 濱口竜介監督『親密さ(short version)』を見に行きました。前々から見たいと思っていた作品でした。
濱口監督が書いた戯曲を別の人が演出し、その演劇を撮影したもの という映画です。舞台には箱馬のようなものが数個置かれているだけで、演者はそこに座ったり、テーブルに見たてたりしながら各幕の状況を作り出していきます。最低限の簡素なセットでの芝居です。にも関わらず、見ているうちに観客は演者たちが芝居をしていることを忘れてしまい、本人が発している言葉に胸を締め付けられていきます。演劇と映画の違い、キャメラが間に入ることに対しての真摯な試みだと思いました。この作品をまぎれもない映画たらしめているのは、時折はさまれる舞台の観客の顔が逃さずに捉えられていることだと思います。
監督が急用でフランクフルトまで来ることが出来ず、お客さんが少なかったのが悔やまれる作品でした。
一方一方一方その頃、大工原・渡辺両名は、NIPPON CINEMA部門会場へ上映開始ぎりぎりに滑り込みました。
今回知り合った藤原敏史監督の『無人地帯』(震災関連のドキュメンタリー映画)を見るためでした。
映画が始まって「角川映画」のタイトルがバーン。
大工原「へー、角川ってドキュメンタリーにも金出すんだ。エライね」
渡辺「・・・・・・」
きこりが木を切ってます。
大工原「あれ、ドキュメンタリーなのに役所広司が出てる」
渡辺「・・・・・・これ、あきらかに違う映画ですよね」
大工原「そうだね・・・」
やがて『キツツキと雨』のタイトルが。
渡辺「あ、わたしこれ観たかったんです」
大工原「俺も」
ということで、最後まで見たそうです。
二人はこの時、ニッポン・コネクションには別の会場があることを初めて知ったのでした。
さて、夜も10時を過ぎました。けれどもニチコネ会場ゲーテ大学は変わらず人で賑わっております。
もう一本ビールが飲みたいです。
しかし僕はこれから座談会です。
『Sugar baby』隈元博樹監督、『しんしんしん』眞田康平監督と3人でのトークショーが企画されました。テーマはおおまかに『新世代の映画作家』です。なんかでかいです。
午後10時半、トーク会場に着きました。
こんな時間にも関わらずけっこうお客さんも来てくれました。その中には、大工原正樹、渡辺あい、チェコから駆けつけてくれた渡辺の友人Mさんの姿も。やっと会えました。
登壇者には各一人ずつ通訳がついてくれるのですが、僕の通訳をしてくれたのが、桃まつり すきで『春まで十日間』を監督していたStefanie Kolk(ステファニー・コルク)さんでした。この人、めちゃくちゃきれいです。かわいいです。
「これがひとめぼれか」と僕は思いました。
トークはそれぞれの作品の出自・映画を撮ることになった経緯の違いから入り、日本の映画の現状まで広がりました。
座談会が終わると午前1時近くになっていました。さすがに疲れました。
ホテルに帰ると言葉の通り即寝でございます。
しかしあれですね。午前中から起きてると一日にいろいろ出来るものですね。
おやすみなさい。
大阪シネ・ヌーヴォ 舞台挨拶レポート!(冨永圭祐)
この度6月2日より、大阪は九条にございますシネ・ヌーヴォさんにて『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIが公開されました。
代表して、大工原正樹(『ホトホトさま』監督)、佐野真規(『お姉ちゃん、だいきらい』監督)、川島玄士(『ちるみの流儀』監督)、冨永圭祐(宣伝代表)が、長宗我部陽子さん(『ホトホトさま』『純情NO.1』主演)と共に舞台挨拶にお邪魔しました!
AM9:20羽田空港集合。
またやっちまいました。前日に星野洋行(『電撃』キャメラマン)と3時まで飲み、マクロスFを見たせいで2時間しか寝ておりません。
当然のごとく、大工原正樹は集合時間ぎりぎりに来るので、その前に一枚。
わずか一時間のフライトで大阪に着きました。
合言葉は「冨永がいるから大丈夫」です。
なにを隠そう僕は関西人です。
空港から難波までの電車移動のスムーズさは長宗我部さんと大工原正樹を確実にうならせました。
みんな大好き阪急電車に乗り込む長宗我部さん、大工原正樹
しかし難波についた途端、方向感覚を失い、迷子となりました。
長宗我部さんの機転で無事ホテルへ着き、チェックイン。
シネクラブ「映画侠区(シャシンきょうく)」の戸田光啓さんと再会いたしました。
戸田さんは、2010年に大阪で「大工原正樹特集上映」を企画してくださり、大変お世話になった方です。
別のルートで到着した佐野真規、川島玄士とも合流し、道頓堀を散策。
『夫婦善哉』で有名な法善寺横町でお好み焼きを食べました。
お好み焼きにもう一品とビール一杯がついて900円です。安いです。美味いです!
その後、年季の入った渋い喫茶店でお茶しました。
大工原正樹は「一味違うコロンビア」を頼んでおりました。
川島玄士は「かっこいいな…」と思ったと後に語りました。
戸田さんとお別れし、我々は一路、九条へ。
戸田さん、ありがとうございました。
駅からまたもや皆をうならせるスムーズな案内でシネ・ヌーヴォさんへ到着。
「心にスタンガンを持て!」やっぱりナオミ(中原翔子さん)じゃないとさまになりませんね。
実は、シネ・ヌーヴォさんと『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』には深いご縁がございます。
『ホトホトさま』を日本で、いや世界で最初に上映した映画館がここシネ・ヌーヴォさんなのです!
2010年のシネ・ドライブで招待作品としてシネ・ヌーヴォさんで上映され、それを皮切りに『ホトホトさま』は東京での公開、ドイツや各地方の巡業へと踏み切っていくことが出来ました。
それだけに、ここで公開できるということには一際感慨深いものがありました。
どこか「帰ってきた」という感覚が大工原正樹にはあったかもしれません。
しかしやはりシネ・ヌーヴォさんは素敵です!
劇団・維新派さんが手がけた内装は決して他の映画館に真似できないものとなっております。切り株で出来た椅子、落ち着いた照明、なにより目を引くのは、壁にびっしりと書かれた映画監督やゲストの方々のサインです!
「あ、誰々も来てる!」「おお、誰々もある!」
とそうそうたる面子に並んで僕たちも書かせていただきました。
上映前に、関西の映像・映画情報サイト「キネプレ Cinema Press」編集長の森田和幸さんが取材に来てくださいました。
掲載していただいたインタビュー記事はこちら→(http://www.cinepre.biz/?p=676)
取材を受ける大工原正樹と長宗我部陽子さん
森田さん、ありがとうございました。
シネ・ヌーヴォの創設者で代表でもある景山理さんもわざわざ顔を見せてくださったので、皆でご挨拶。
いよいよ上映時間が近づいて参りました。
上映前に舞台挨拶です。一人一人紹介されながら壇上へあがると、予想以上のお客様の人数にホッとしながら感動しました。
大工原正樹は、「大阪で公開できることをうれしく思っております」と喜びを打ち明け、『ホトホトさま』とプロジェクトDENGEKIについてお話しました。
また、『ホトホトさま』と『純情NO.1』について、「『ホトホトさま』を撮った動機のひとつに長宗我部さんと再び仕事がしたかったというのがあります。また『純情NO.1』は『ホトホトさま』の公開が決まってから、もう1本彼女の主演作を撮りたいと思い急遽作ったコメディです。二作を見て全然違った魅力を表現できる長宗我部陽子という役者をもっと多くの方に知ってもらいたい」とアピール。
また、『赤猫』主演の森田亜紀さんは、現在大畑創監督の『へんげ』主演で話題になっていますが、「元はといえば、僕が『赤猫』で見つけてきた、とここでだけ自慢しておきたいです(笑)」と会場の笑いを誘いました。
長宗我部陽子さんは、「ベテランの監督と若い監督の作品が同時に上映されるのはとても面白い機会だと思います。是非、たくさんの方に見ていただきたいです」とご挨拶。
佐野真規は、『純情NO.1』という作品における大工原正樹のいい加減さをアピール。3時間で大工原自身が書き上げたシナリオは、『ホトホトさま』や『赤猫』といった井川耕一郎さんの脚本とあまりにギャップがございます。
しかし、その両方を演出できる大工原正樹の演出力の振れ幅はすごいものである、と話しました。
会場は温かい笑いにつつまれましたが、大工原正樹は照れながらも「いや、おれは脚本に書いてあることをそのまま撮っているだけだから。井川さんの脚本だとああなるし、おれが自分で書いたホンだと『純情NO.1』みたいになるんだよ。いい加減なわけじゃないです(笑)」とフォロー。
川島玄士は、自作『ちるみの流儀』について、「いいかげんさで言ったら僕も負けてないっす。ビデオ課題で5分ほどの尺で撮ったものがどういうわけかラインナップに入ってしまいました。他の作品で緊張したあと、気楽に見てもらえる作品です(笑)」と。
それに対し大工原は、「だからいい加減じゃないって(笑)『ちるみの流儀』は映画としての体裁は悪いけど、プロジェクトDENGEKIの10本の中に置くことで不思議と輝く作品」と評しました。
僕は、自分の監督作品はラインナップに入っていないのになぜだか登壇しちゃいました。
当然のごとく、「あれ、僕何話せばいいんですかね?」という事態に陥りました。
ということで、監督と共同で脚本を書かせていただいた渡辺あい監督『電撃』について少しお話させていただきました。
18時40分からと20時35分からの2回行われた舞台挨拶は、ブログのことやら他のラインナップのことやらとにかく話したいことがいっぱいで、みんなで長々とお話してしまいました!
あまりにまとまらないんで
大工原「じゃあ、長宗我部さんに最後に一言しめてもらって、上映にうつらせてもらいましょう」
長宗我部さん、ほんと頼りになります。
そんな相変わらずなチームでしたが、大阪のお客様はみな、笑いと温かい拍手で迎えてくださいました。
上映が始まると、やはりそわそわしてしまって客席の後ろから見てしまいます。
印象的だったのは、『ちるみの流儀』で場内が笑いにつつまれていたことでした。(初日の上映最後の作品は『ちるみの流儀』)
大工原正樹の指摘通り、最後に『ちるみの流儀』が持っていきました。
川島玄士がほくそえんでおります。
上映終了後、シネ・ヌーヴォの山崎紀子支配人、映画侠区の方々3名と、佐野真規のご友人と皆で串カツ屋へ飲みに行きました。
「ソース二度付け禁止!!」
これです!これこそ串カツです。
しかも7種盛り合わせにドリンク付いて一人900円。安いです!美味いです!
僕は普段東京で「や、関西は飯が安くてうまいんすよ。マジで食い物は関西す!」とさして知らないくせにぼやいておりますが、証明してくれました。
途中で、大工原正樹に電話がかかってきました。
電話の主は竹本直美さんでした。どうやら桃娘たちが大阪にいるようです!
そう、現在大阪のプラネットプラスワンさんで、「桃まつり すき」を上映中なのでした。
http://www.planetplusone.com/special/_presents.php
ということで、竹本直美さん(『帰り道』監督)と名倉愛さん(『SAI-KAI』監督)が合流しました。
宴会は一時半ごろまで続きました。
山崎さんは自転車でチリンチリンと帰って行かれました。自転車が似合う素敵な女性です。
山崎さん、なにかとお世話になりました。
この後どうするのか、としばらく押し問答した末、桃娘たちは中崎町へ戻ることになり、我々はすぐ近くにある松島新地にふらっと立ち寄りました。
飛田と並ぶ赤線地帯であります。が、店は全て閉まっており、大人しくタクシーに乗って難波に戻りました。
が、ここでは決して終わらず、我々はさらに難波の街を徘徊しました。
まだまだ夜はこれからです。
川島玄士と僕はゴミ箱を漁るネズミの大群を発見し、それをあえて長宗我部さんに告げることで長宗我部さんの可愛いリアクションを引き出して楽しみました。
徘徊した末、たこ焼き屋でもう一杯飲むことになりました。
午前も3時半を過ぎ、さすがにホテルに帰って寝ました。
おやすみなさい。
大阪のお客様、シネ・ヌーヴォのみなさん、ありがとうございました!
そして、上映はまだまだ続きます。
引き続き、よろしくお願いいたします!
今回の舞台挨拶について、CINEMA TOPICS ONLINEのデューイ松田さんが記事を書いてくださいました!
(CINEMA TOPICS ONLINE→http://www.cinematopics.com/cinema/c_report/index3.php?number=6439)
松田さん、ありがとうございます!
6/2大阪シネヌーヴォ舞台挨拶!
大阪シネヌーヴォ(http://www.cinenouveau.com/news/news.html)にて
6/2の18:40〜【Aプロ】、20:35〜【Bプロ】の回に舞台挨拶を行います。
<登壇者>
長宗我部陽子(『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『純情No.1』主演)
大工原正樹(『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『純情No.1』『赤猫』監督)
冨永圭祐(『電撃』脚本 『乱心』監督)
川島玄士(『ちるみの流儀』監督)
佐野真規(『お姉ちゃん、だいきらい』監督)
どちらも上映前を予定しています。
ぜひ、ご来場くださいませ!
『プロジェクトDENGEKI』6/2〜6/8シネヌーヴォ上映情報!
シネヌーヴォにて上映のプロジェクトDENGEKI各作品の情報をまとめました。
大阪では限定一週間上映です。ぜひお見逃しなく!
○上映スケジュール詳細○
大阪シネヌーヴォ(http://www.cinenouveau.com/coming/coming.html)
【Aプロ】:『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+『電撃』
【Bプロ】:『純情No.1』+『赤猫』+『ちるみの流儀』
【Cプロ】:『わたしの赤ちゃん』+『静かな家』+『BMG』+『正当防衛』+『お姉ちゃん、だいきらい』
6/2(土)
18:40〜【Aプロ】 20:35〜【Bプロ】
6/3(日)
18:40〜【Aプロ】 20:35〜 休映
6/4(月)
18:40〜【Aプロ】 20:35〜【Cプロ】
6/5(火)
18:40〜【Aプロ】 20:35〜【Bプロ】
6/6(水)
18:40〜【Cプロ】 20:35〜【Aプロ】
6/7(木)
18:40〜【Bプロ】 20:35〜【Aプロ】
6/8(金)
18:40〜【Cプロ】 20:35〜【Aプロ】
【Aプログラム】『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+『電撃』
『電撃』2011年/HD/37分
監督:渡辺あい
出演:美輪玲華、安藤匡史、波多野桃子
脚本:冨永圭祐 渡辺あい
制作:地良田浩之 笠原雄一
撮影・照明:星野洋行
録音:川口陽一 中瀬慧 清水絵里加
美術:山形哲生 原太一
衣装:坂本博之
スクリプト:中島知香
助監督:冨永圭祐 内藤瑛亮 山形哲生 佐野真規
撮影助手:神保卓也
照明助手:芳士戸一成
スタントコーディネート:根本大樹 スタント:イチコ
編集:地良田浩之 渡辺あい
整音:中瀬慧
音楽:上松翔一
<STORY>
「愛するタカヒロが浮気をしているーーー」。けれどミチコは、いつかタカヒロの愛を取り戻せると信じていた。「だって、わたしのお腹にはあの人の子が宿っているのだもの…」。ミチコは寡黙に、タカヒロの身の回りの世話を焼く幸せを噛みしめていた。しかしある日、タカヒロの妹と称する少女が現れ居候をはじめた日から、ミチコの愛の生活が音をたてて崩れ始める……。<解説>
渡辺あい、本気の処女作。この時代錯誤な設定に「リアル」をもたらしているのは、間違いなくヒロイン・美輪玲華の圧倒的な存在感だろう。美輪が演ずるミチコは劇中ある職業を身に纏うのだが、その職業がギミックと見えてしまえば失敗のこの映画で、彼女は登場の瞬間からそれが紛れもない現実であることを、そのフィクション性の高い肉体と佇まいで表現してしまう。そして、美輪の時代錯誤を際立たせるはずの波多野桃子も、一見今の少女風を装いながら、現代のそれとは真逆の「速い」芝居で美輪の存在感にたち向かう。そして、二人の女に挟まれる安藤匡史のストイックな受けの芝居が絶妙なアンサンブルを生み出す。これだけ配役に成功している映画が面白くないわけがないのだが、この三人の想いが錯綜するドラマは、大胆な省略をそうとは気づかせないしっとりとした情緒も絡ませながらクライマックスへと向かっていく。いくつもの謎を残しながら。渡辺あいは、ここが映画的な見せ場だというポイントを逃さない。特に3つあるラブシーンの演出は見るものをハッとさせ必見。つまり、運動神経がいいのだ。
【Bプログラム】『純情No.1』+『赤猫』+『ちるみの流儀』
『純情No.1』2011/20分/HDV
監督・脚本:大工原正樹
出演:長宗我部陽子 北山雅康 猪原美代子 市沢真吾
撮影・照明:山田達也 録音:臼井勝 音楽:山根ミチル
<解説>
主人公の女の見事な思い込みが、終始デタラメな展開を呼ぶコメディ。なのだろうか?大雑把に言ってしまえば、憎しみがつきぬけてやがて愛に変わるお話な気がするのだが、なんだか違う気もする。タイトルもデタラメなようで、確かにこれしかない気もする。ひょっとしたら大工原正樹に騙されているのかもしれない。ただひとつ言えるのは、主演の長宗我部陽子がデタラメでチャーミングでひたすら楽しい映画であるということだ。
『赤猫』2004年/42分/DV
監督:大工原正樹
出演:森田亜紀、李鐘浩、藤崎ルキノ、永井正子
脚本:井川耕一郎、撮影:福沢正典
<STORY>
私(李鐘浩)の出張中、妻の千里(森田亜紀)が流産した。風呂の電球を替えようとして、椅子から転落して流産したのだ。
退院後の千里は何もしゃべらず、マンションのベランダからただ遠くを見つめているだけだった。
だが、ある夜、ふとしたことをきっかけに、千里は流産に至る経緯を私に話しだした。
近頃、町で頻発している連続放火事件……。
偶然に聞いた夫が浮気しているという根拠のない噂……。
いるはずのない猫の気配を感じ取り、ネコアレルギーの症状が出たこと……。
夫が学生時代に買った本の中から出てきた一枚の古い写真に写っている女性……。
日常生活で些細な疑念や異変が積み重なっていく中、ある日、千里は放火犯を意味する「赤猫」という隠語を耳にする。
そして、そこから千里の話はとうてい信じられないような方向へと展開してゆく……。<解説>
ナレーションやモノローグ表現の極致ともいえる一本。人が狂っていくのを目の当たりにするのは恐ろしい。ましてここでは結果が先に知らされているのだ。ことの次第を聞いていくうち、夫は目の前にいる妻が見知らぬ他人に見えてくる。観る者はその緊張感と恐怖で息が苦しくなる。やがて真っ暗な背景のなか、森田亜紀がこちらに向かって語りはじめる、そこに誰もいないかのように……。ラストが訪れたとき、私たちは解放され心底ホッとするだろう。劇中の夫も実はそうだったのではないか。
『ちるみの流儀』 2011年/20分/DV
監督:川島玄人
出演:浜田みちる、芳士戸一成、山田達也、川島玄人、神保卓也 他<解説>
映画学校のビデオ課題の撮影のために集まった監督カワシマと女優のちるみ。しかし相手役が遅刻していて撮影が始まらない。やっと来た相手役をねちねちと虐め始めるちるみは、すでに劇用の酒でしたたか酔っていた……。抱腹絶倒、連作スタイルのフェイク・ドキュメント。なんといっても自己中心的でワガママ放題の女優・ちるみを演じる浜田みちるの存在感が素晴らしいのだが、時々演技なのか素なのか判らなくなる瞬間がありスリリング。突然撮影現場から逃走する彼女の後ろ姿は必見。
【Cプログラム】『わたしの赤ちゃん』+『静かな家』+『BMG』+『正当防衛』+『お姉ちゃん、だいきらい』
『わたしの赤ちゃん』2010年/16分/16mm→DV
監督・脚本:磯谷渚
出演:藤井百代 森田亜紀 新井秀幸 福田英史 泉水美和子
スタッフ:上田紳一朗 大坂春菜 大野裕之 小形進之介 奥野達也 神保准 山田剛志 山本豪一 和田格
<STORY>
臨月を迎えた初美は妹の千佳と安産祈願に訪れるが、神社の階段から転がり落ちて死産してしまう。半年後、無事出産した千佳の元へ初美が訪れる。千佳は子供に、初美が自分の子供につけるはずだった、葵という名をつけていた……。
<解説>
姉妹の“痛快”な愛憎劇。15分の尺でドラマを描くには、ちんたらしてられないとばかりに激烈に展開していく。冒頭ほんの1,2分で、姉妹がともに妊娠、姉は流産し、妹の身籠った子の父親を疑い、ドラマの準備は整う。わずか1シーンでこれをやってしまう鮮やかさは、キム・ギヨンを思わせる。
姉妹の関係性を描く芝居場に階段が選ばれたのが必然としかいいようがないならば、その関係が限界まで来たとき、映画はあるべきラストシーンを迎える。絶対にもうこうなるしかないだろう!だからエクスタシーを感じ、時に観客は笑う。それでいいのだ。
『静かな家』2008年/30分/16mm
監督:長谷部大輔
出演:奥ノ矢佳奈 田中洋之助 河野純平 仲谷みなみ
脚本:服部隆志/制作:小川大樹/助監督:後閑広/撮影:安部
雅行/録音:青木瑠生/美術:難波和之/編集:真下雅敏
<STORY>
中学1年生の友澤なみき(13)は父親の英也(40)と二人暮らし。ある朝、なみきは英也に告げる。「お父さん、ワタシ、人を殺したい。できれば、お父さんがいいんだけど」
その日からなみきと英也の関係は急速に変化し始める。夏の気配、優等生のレッテル、母の不在、父の失業、そして父への本当の想い・・・。はたしてなみきは父を殺すのだろうか?
<解説>
父への複雑な思いから放火を繰り返す少女と、娘の変調に戸惑いながらも普通の親子でいようと無理を重ねる失業中の父。綺麗なものとどす黒く汚いものが同居するから面白いのだという長谷部大輔の人間観がここでも随所に炸裂しているのだけれど、不思議とリリカルな印象を残す。セリフを最小限に抑えながら、描写することの喜びに満ち溢れた長谷部版『台風クラブ』。
(※数秒間、フィルム原版による画の乱れあり。ご了承ください)
『BMG』2009年/20分/DV
監督・脚本:松浦博直
出演:伊藤まき 西口浩一郎 岸野雄一
撮影:小原悠人/照明:森内健介/録音:朝倉加葉子/助監督:
甲斐靖人 冨永圭佑/音楽:瀬川聡嗣/銃器効果:遊佐和寿
<解説>
決してバカではないけれど夢見がちな男が、暗い瞳の女暗殺者に一目惚れをするファンタジー。フィルムノワールへの遠い記憶に連なる展開と歯切れのよい演出で見るものをぐいぐい引っ張りながら、ラスト、勘違い男の楽天性と女の「信じる心」が唖然とするような奇跡を呼ぶ。
なんといっても、女暗殺者を演じる伊藤まきのファム・ファタールぶりが素晴らしい。
『正当防衛』2010年/16分/16mm→DV
監督・脚本:伊野紗紀
出演:宮田亜紀 佐藤奈美子 森田亜紀 小野島由惟 香取剛 渡部佐枝子 川島玄士 内海敦 原田浩二 菊池直彦
スタッフ:中瀬慧 和泉陽光 今岡利明 神田光 木村栄一郎 小岩貴寛 宝田恵一 西田純 原田浩二 吉田峻
<STORY>
強い決意を胸に市役所を辞め、人材派遣会社の営業に転職した桜井。派遣スタッフ、顧客、後輩そして上司に挟まれた桜井に次々とトラブルが降り掛かる。一人、また一人と社員が去っていき…。極限まで追い詰められた桜井が、自分を守るために求めたものとは。
<解説>
希望を胸に転職した人材派遣会社で高圧的に成果を求める女性上司や規則を守らない派遣スタッフの対処に追われる桜井。やがて上司の圧力に耐えかね辞めていく同僚たち。取り残され、極限状態になった桜井が最後に求めたものは……。
監督・伊野沙紀の実体験を元にしているだけに細部のリアリティには凄みがある。終盤、宮田亜紀演じる桜井が線路沿いを歩く後姿のショットが、彼女の崩壊を伝えて痛々しい。
『お姉ちゃん、だいきらい』2011/13分/DV
監督:佐野真規
出演:久保紫苑、内藤瑛亮、加藤綾佳、川口陽一
撮影:星野洋行/録音:清水絵里加/助監督:冨永圭祐/演出助手:山形哲生
シオンは自分のお姉ちゃんが変な男とくっついたのが何だか許せない。そこで、2人を別れさせようと企む。気弱そうな先輩を無理やり引っ張り込んで、色々とイタズラを仕掛けるのだが…しかし、シオンが手伝いを頼んだこの先輩、こいつもなんだかしょうもない男だった。四人の男女が織り成すほのぼのコメディー。天真爛漫に男を振り回すシオンが魅力的な短編。<解説>
先輩男と後輩女の童貞コメディ。佐野真規は、自分の魅力に無自覚な(フリをしている)女に振り回されることこそ最高の快楽、と言わんばかりにとことん男をしょうもなく描く。観ながら思わず「とぼけやがって」と呟きそうになるほど天真爛漫な悪女が板についている久保紫苑が魅力的。一方の先輩男を演じる内藤瑛亮が時折見せる、胸がざわめくような暗い眼差しは、この微笑ましいコメディにあって唯一の悪意を添える。そして観た後、はたと気づくのだ。この男、うらやましいぞ、と。
盛りだくさんのプログラムです。
ぜひ【A】、【B】、【C】の各プログラム制覇してください!