塩田明彦監督『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』コメント

映画監督の塩田明彦さんより『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』へのコメントをいただきました。


たったひとつの仕草、たったひとつの身振りが見えるはずのない過去や記憶、情念や執着を私たちに突き付けてくる。映画の冒頭、母親の遺骨を散骨する姉の身振り、かつて足繁く通った映画館のロビーでありありと記憶を再現しようと体を動かす弟の身振り、残された住居の庭先から、あの品物を取り出すときの手付き。ひとつの身振りがもうひとつの身振りを引き寄せ、響き合い、まるで暗いトンネルの中で叫びと響きが反響し合うが如くに、過去に呪縛された人間たちの苦悩と決別の物語を紡ぎ出していく。そこにこの映画の見事な蠱惑がある。

塩田明彦:映画監督(『害虫』『カナリア』『どろろ』) )


『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』はオーディトリウム渋谷にて9/24〜10/8公開!連日21:10〜(9/28休映)