シネマテークたかさき上映情報詳細!

「姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う」+プロジェクトDENGEKI
高崎市シネマテークたかさきで9月29日(土)〜10月5日(金)公開!!
虐待の記憶に苛まれる姉弟の2日間の再生の旅を描いた話題作『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』とプロジェクトDENGEKIの9作品を高崎市シネマテークたかさきで9月29(土)〜10月5日(金)までの1週間限定公開!
連日17:4520:00から2回上映します。

【上映スケジュール】
9/29(土)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』      
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『お姉ちゃん、だいきらい』『ちるみの流儀』
9/30(日
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『わたしの赤ちゃん』『BMG』 
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『正当防衛』『赤猫』
10/1(月)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『静かな家』『赤猫』      
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
10/2(火)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』       
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『赤猫』『わたしの赤ちゃん』 
10/3(水)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『BMG』『静かな家』
10/4(木)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『お姉ちゃん、だいきらい』『ちるみの流儀』
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
10/5(金)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『BMG』『静かな家』     
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』

プログラムの詳細はシネマテークたかさきHPをご覧ください。
シネマテークたかさき http://takasaki-cc.jp/free/next

『ホトホトさま』公式HP:http://hotohotosama.web.fc2.com
『ホトホトさま』公式ブログ:http://d.hatena.ne.jp/projectdengeki
『ホトホトさま』Twitterhttp://twitter.com/#!/hotohoto3ma

■作品情報
『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』


2010年/49分/HDV
監督:大工原正樹
出演:長宗我部陽子 岡部尚 森田亜紀 高橋洋 光田力哉
脚本:井川耕一郎  撮影・照明:志賀葉一 録音:臼井勝 音楽:中川晋介
助監督:冨永圭祐 中島知香 渡辺あい 撮影助手:鎌田亮 佐野真規 黒須健 照明補:広瀬寛巳  照明助手:地良田浩之 松久育紀 今村修邦 立石逸平 録音助手:清水裕紀子 川口陽一 美術:原太一 内藤瑛亮 山形哲生 谷脇邦彦 制作:光田力哉 佐本三国 穴原浩祐 笠原雄一 西出美紀  主題歌「姉ちゃんのブルース」唄:長宗我部陽子(作詞:高橋洋 作曲:中川晋介 )音楽協力:山根ミチル 編集:渡辺あい 大工原正樹 整音:清水裕紀子 制作管理:山口博之 市沢真吾 製作:映画美学校 宣伝協力:カプリコンフィルム(吉川正文) 森宗厚子 名倉愛 星野洋行 予告篇制作:浜田みちる 松浦博直 チラシ・デザイン:船井伊智子 チラシ・ヘア&メイク:増田加奈 チラシ・スチール撮影:猪原美代子

【STORY】
蠱(こ)とは古代中国の呪術である。ひとつの器に小動物や昆虫を入れて殺し合いをさせ、最後に残った一匹には強い呪力が宿るという。
母の葬式を終え、かつて暮らした街をぶらりと訪れた妙子と治は、次第に心に巣食うバケモノ「あいつ」の幻に襲われ始める。
【解説】
過去、心に大きな傷を受けた姉と弟。二人は幼少を過ごした街に戻ってくる。その町並みは、二人の癒えぬ心と呼応するかのように諦め枯れ果ててしまっている。「アイツ」の存在。それは治りかけの傷口に似ている。我を忘れてその醜さを凝視してしまう。治りかけとわかっているのに掻きむしってしまう。二人には、傷口から血が吹き出そうとも、その行為を止めることが出来ないのだ。その同じ「蠱」に喰われた傷だけが、二人の絆になっていることが、どうしようもなく悲しい。しかし、物語は最後に救済を与える。それは血だらけになりながらも、自力でつかみ取った「生」に他ならないだろう。
本作は『赤猫』(2004)の大工原正樹が5年ぶりに撮り上げた新作中篇。脚本は、寡作ながらその質の高い仕事ぶりが注目され続けている井川耕一郎(『西みがき』監督、『赤猫』脚本)。撮影・照明は、一般映画と成人映画を自在に往還し、自主映画もコンスタントに撮り続けているベテランの志賀葉一。録音は、こちらも商業映画から自主映画まで幅広く活躍する『接吻』(監督:万田邦敏)・『害虫』(監督:塩田明彦)の臼井勝。音楽には、映画のサウンドトラック初挑戦のミュージシャン・中川晋介。
主演は、存在感のある女優としてベテランから若手まで多くの監督に愛され、また、コアな邦画ファンからも熱心な支持を得ている長宗我部陽子(『恐怖』『行旅死亡人』)と、「東京乾電池」の舞台にも立つ注目の若手俳優岡部尚(『PASSION』『実録 連合赤軍』)。二人が憎しみの輪廻にはまり込む姉弟を繊細に印象深く演じている。共演は、話題作『へんげ』(監督:大畑創)の公開が待たれる森田亜紀(『赤猫』)と、監督・脚本最新作『旧支配者のキャロル』が完成間近の高橋洋(『恐怖』監督・『リング』脚本)。高橋は、主題歌「姉ちゃんのブルース」の作詞も担当。

【コメント】
たったひとつの仕草、たったひとつの身振りが見えるはずのない過去や記憶、情念や執着を私たちに突き付けてくる。映画の冒頭、母親の遺骨を散骨する姉の身振り、かつて足繁く通った映画館のロビーでありありと記憶を再現しようと体を動かす弟の身振り、残された住居の庭先から、あの品物を取り出すときの手付き。ひとつの身振りがもうひとつの身振りを引き寄せ、響き合い、まるで暗いトンネルの中で叫びと響きが反響し合うが如くに、過去に呪縛された人間たちの苦悩と決別の物語を紡ぎ出していく。そこにこの映画の見事な蠱惑がある。
塩田明彦(映画監督・『どろろ』『カナリア』『害虫』)

大工原さんの映画を見ていつも思うのは、「上手いなあ」ということです。『未亡人誘惑下宿』や『風俗の穴場』のように多くの登場人物が一堂に会する集団劇を、まるで撮影所出身の職人監督のような手さばきできちんと演出しきる人は今の日本に大工原さんしかいないのではないでしょうか。これは大げさな賛辞ではなく、その2本を見れば誰もが納得するほかない事実です。『赤猫』以後は上手さに鋭さが加 わって、演出や編集に無駄がなく、ものすごい切れ味とでもいったものを感じます。例えば『ホトホトさま』の開巻のカットの連なりは、それだけでも上手さのみが実現する映画的な充実に満ちていますが、その一連のカットに差し挟まれるバックミラーに映った姉の顔のカットは、そこにバックミラーの顔の画面を挿入することを選択したことの上手さもさることながら、この画面が、映画の中盤で今度はバックミラーに映った弟の顔の画面と呼応するように仕組まれていて、しかもその画面が物語に決定的に不穏な空気を漂わせるきっかけともなるという憎たらしい構成で、そういうことを今の大工原さんは冷静にやってのけるわけです。大工原さんの映画を未見の人は、なにはさておき、この機会に絶対に見るべきです。
万田邦敏(映画監督・『接吻』『UNLOVED』)

「姉ちゃん、ホトホトさまの蟲を使う」は、混乱の平成に狂い咲きするハードセンチメンタルな姉弟の愛の物語。才人井川耕一郎の描く日本の土着と風土に根ざした扇情的な復讐譚を、確かな技術で映像に焼き付けた大工原正樹の「腕前」が冴え渡る。これぞまさしく「日本映画」の大傑作。是非劇場で!
佐々木浩久(映画監督・『発狂する唇』『血を吸う宇宙』)

姉弟ものに弱い僕は、見ていて泣きそうになった。ホラー映画というかなんとい うか不思議な映画…でも、感動しました。傑作だと思います。
屑山屑男(「TRASH-UP!!」編集長)

姉弟映画というジャンルがあると思う。そのスジには、私もちょいと自負があるが、大工原監督の演出は、さすが、舌を巻いた。この姉さん、相当のんきだ。そして、頓知がきいている!
七里圭(映画監督・『眠り姫』『のんきな姉さん』)

■「プロジェクトDENGEKI」作品情報
『電撃』


2011年/HD/37分
監督:渡辺あい
出演:美輪玲華、安藤匡史、波多野桃子
脚本:冨永圭祐 渡辺あい 制作:地良田浩之 笠原雄一 撮影・照明:星野洋行 録音:川口陽一 中瀬慧 清水絵里加 美術:山形哲生 原太一 衣装:坂本博之 スクリプト:中島知香 助監督:冨永圭祐 内藤瑛亮 山形哲生 佐野真規 撮影助手:神保卓也 照明助手:芳士戸一成 スタントコーディネート:根本大樹 スタント:イチコ 編集:地良田浩之 渡辺あい 整音:中瀬慧 音楽:上松翔一

【STORY】
「愛するタカヒロが浮気をしているーー」。けれどミチコは、いつかタカヒロの愛を取り戻せると信じていた。「だって、わたしのお腹にはあの人の子が宿っているのだもの……」。ミチコは寡黙に、タカヒロの身の回りの世話を焼く幸せを噛みしめていた。しかしある日、タカヒロの妹と称する少女が現れ居候をはじめた日から、ミチコの愛の生活が音をたてて崩れ始める……。
【解説】
渡辺あい、本気の処女作。この時代錯誤な設定に「リアル」をもたらしているのは、間違いなくヒロイン・美輪玲華の圧倒的な存在感だろう。美輪が演ずるミチコは劇中ある職業を身に纏うのだが、その職業がギミックと見えてしまえば失敗のこの映画で、彼女は登場の瞬間からそれが紛れもない現実であることを、そのフィクション性の高い肉体と佇まいで表現してしまう。そして、美輪の時代錯誤を際立たせるはずの波多野桃子も、一見今の少女風を装いながら、現代のそれとは真逆の「速い」芝居で美輪の存在感にたち向かう。そして、二人の女に挟まれる安藤匡史のストイックな受けの芝居が絶妙なアンサンブルを生み出す。これだけ配役に成功している映画が面白くないわけがないのだが、この三人の想いが錯綜するドラマは、大胆な省略をそうとは気づかせないしっとりとした情緒も絡ませながらクライマックスへと向かっていく。いくつもの謎を残しながら。渡辺あいは、ここが映画的な見せ場だというポイントを逃さない。特に3つあるラブシーンの演出は見るものをハッとさせ必見。つまり、運動神経がいいのだ。


『純情No.1』

2011年/20分/HDV
監督・脚本:大工原正樹
出演:長宗我部陽子 北山雅康 猪原美代子 市沢真吾
撮影・照明:山田達也 録音:臼井勝 音楽:山根ミチル

【解説】
主人公の女の見事な思い込みが、終始デタラメな展開を呼ぶコメディ、なのだろうか? 大雑把に言ってしまえば、憎しみがつきぬけてやがて愛に変わるお話な気がするのだが、なんだか違う気もする。タイトルもデタラメなようで、確かにこれしかない気もする。ひょっとしたら大工原正樹に騙されているのかもしれない。ただひとつ言えるのは、主演の長宗我部陽子がデタラメでチャーミングでひたすら楽しい映画であるということだ。


『わたしの赤ちゃん』

2010年/16分/16mm→DV
監督・脚本:磯谷渚
出演:藤井百代 森田亜紀 新井秀幸 福田英史 泉水美和子
スタッフ:上田紳一朗 大坂春菜 大野裕之 小形進之介 奥野達也 神保准 山田剛志 山本豪一 和田格
【STORY】
臨月を迎えた初美は妹の千佳と安産祈願に訪れるが、神社の階段から転がり落ちて死産してしまう。半年後、無事出産した千佳の元へ初美が訪れる。千佳は子供に、初美が自分の子供につけるはずだった、葵という名をつけていた……。
【解説】
姉妹の「痛快」な愛憎劇。15分の尺でドラマを描くには、ちんたらしてられないとばかりに激烈に展開していく。冒頭ほんの1、2分で、姉妹がともに妊娠、姉は流産し、妹の身籠った子の父親を疑い、ドラマの準備は整う。わずか1シーンでこれをやってしまう鮮やかさは、キム・ギヨンを思わせる。
姉妹の関係性を描く芝居場に階段が選ばれたのが必然としかいいようがないならば、その関係が限界まで来たとき、映画はあるべきラストシーンを迎える。絶対にもうこうなるしかないだろう! だからエクスタシーを感じ、時に観客は笑う。それでいいのだ。


『正当防衛』


2010年/16分/16mm→DV
監督・脚本:伊野紗紀
出演:宮田亜紀 佐藤奈美子 森田亜紀 小野島由惟 香取剛 渡部佐枝子 川島玄士 内海敦 原田浩二 菊池直彦
スタッフ:中瀬慧 和泉陽光 今岡利明 神田光 木村栄一郎 小岩貴寛 宝田恵一 西田純 原田浩二 吉田峻

【STORY】
強い決意を胸に市役所を辞め、人材派遣会社の営業に転職した桜井。派遣スタッフ、顧客、後輩そして上司に挟まれた桜井に次々とトラブルが降り掛かる。一人、また一人と社員が去っていき……。極限まで追い詰められた桜井が、自分を守るために求めたものとは。
【解説】
希望を胸に転職した人材派遣会社で高圧的に成果を求める女性上司や規則を守らない派遣スタッフの対処に追われる桜井。やがて上司の圧力に耐えかね辞めていく同僚たち。取り残され、極限状態になった桜井が最後に求めたものは……。
監督・伊野沙紀の実体験を元にしているだけに細部のリアリティには凄みがある。終盤、宮田亜紀演じる桜井が線路沿いを歩く後姿のショットが、彼女の崩壊を伝えて痛々しい。


『静かな家』


2008年/30分/16mm
監督:長谷部大輔
出演:奥ノ矢佳奈 田中洋之助 河野純平 仲谷みなみ
脚本:服部隆志 制作:小川大樹 助監督:後閑広 撮影:安部雅行 録音:青木瑠生 美術:難波和之 編集:真下雅敏

【STORY】
中学1年生の友澤なみき(13)は父親の英也(40)と二人暮らし。ある朝、なみきは英也に告げる。「お父さん、ワタシ、人を殺したい。できれば、お父さんがいいんだけど」
その日からなみきと英也の関係は急速に変化し始める。夏の気配、優等生のレッテル、母の不在、父の失業、そして父への本当の想い……。はたしてなみきは父を殺すのだろうか?
【解説】
父への複雑な思いから放火を繰り返す少女と、娘の変調に戸惑いながらも普通の親子でいようと無理を重ねる失業中の父。綺麗なものとどす黒く汚いものが同居するから面白いのだという長谷部大輔の人間観がここでも随所に炸裂しているのだけれど、不思議とリリカルな印象を残す。セリフを最小限に抑えながら、描写することの喜びに満ち溢れた長谷部版『台風クラブ』。(※数秒間、フィルム原版による画の乱れあり。ご了承ください)


『お姉ちゃん、だいきらい』


2011/13分/DV
監督:佐野真規
出演:久保紫苑 内藤瑛亮 加藤綾佳 川口陽一
撮影:星野洋行 録音:清水絵里加 助監督:冨永圭祐 演出助手:山形哲生

【STORY】
シオンは自分のお姉ちゃんが変な男とくっついたのが何だか許せない。そこで、2人を別れさせようと企む。気弱そうな先輩を無理やり引っ張り込んで、色々とイタズラを仕掛けるのだが…しかし、シオンが手伝いを頼んだこの先輩、こいつもなんだかしょうもない男だった。4人の男女が織り成すほのぼのコメディー。天真爛漫に男を振り回すシオンが魅力的な短編。
【解説】
先輩男と後輩女の童貞コメディ。佐野真規は、自分の魅力に無自覚な(フリをしている)女に振り回されることこそ最高の快楽、と言わんばかりにとことん男をしょうもなく描く。観ながら思わず「とぼけやがって」と呟きそうになるほど天真爛漫な悪女が板についている久保紫苑が魅力的。一方の先輩男を演じる内藤瑛亮が時折見せる、胸がざわめくような暗い眼差しは、この微笑ましいコメディにあって唯一の悪意を添える。そして観た後、はたと気づくのだ。この男、うらやましいぞ、と。


『BMG』


2009年/20分/DV
監督・脚本:松浦博直
出演:伊藤まき 西口浩一郎 岸野雄一
撮影:小原悠人 照明:森内健介 録音:朝倉加葉子 助監督:甲斐靖人 冨永圭佑 音楽:瀬川聡嗣 銃器効果:遊佐和寿

【解説】
決してバカではないけれど夢見がちな男が、暗い瞳の女暗殺者に一目惚れをするファンタジー。フィルムノワールへの遠い記憶に連なる展開と歯切れのよい演出で見るものをぐいぐい引っ張りながら、ラスト、勘違い男の楽天性と女の「信じる心」が唖然とするような奇跡を呼ぶ。
なんといっても、女暗殺者を演じる伊藤まきのファム・ファタールぶりが素晴らしい。


『ちるみの流儀』


2011年/20分/DV
監督:川島玄人
出演:浜田みちる 芳士戸一成 山田達也 川島玄人 神保卓也

【解説】
映画学校のビデオ課題の撮影のために集まった監督カワシマと女優のちるみ。しかし相手役が遅刻していて撮影が始まらない。やっと来た相手役をねちねちと虐め始めるちるみは、すでに劇用の酒でしたたか酔っていた……。抱腹絶倒、連作スタイルのフェイク・ドキュメント。なんといっても自己中心的でワガママ放題の女優・ちるみを演じる浜田みちるの存在感が素晴らしいのだが、時々演技なのか素なのか判らなくなる瞬間がありスリリング。突然撮影現場から逃走する彼女の後ろ姿は必見。


『赤猫』

2004年/42分/DV
監督:大工原正樹
出演:森田亜紀 李鐘浩 藤崎ルキノ 永井正子
脚本:井川耕一郎 撮影:福沢正典

【STORY】
私(李鐘浩)の出張中、妻の千里(森田亜紀)が流産した。風呂の電球を替えようとして、椅子から転落して流産したのだ。
退院後の千里は何もしゃべらず、マンションのベランダからただ遠くを見つめているだけだった。
だが、ある夜、ふとしたことをきっかけに、千里は流産に至る経緯を私に話しだした。
近頃、町で頻発している連続放火事件……。
偶然に聞いた夫が浮気しているという根拠のない噂……。
いるはずのない猫の気配を感じ取り、ネコアレルギーの症状が出たこと……。
夫が学生時代に買った本の中から出てきた一枚の古い写真に写っている女性……。
日常生活で些細な疑念や異変が積み重なっていく中、ある日、千里は放火犯を意味する「赤猫」という隠語を耳にする。
そして、そこから千里の話はとうてい信じられないような方向へと展開してゆく……。
【解説】
ナレーションやモノローグ表現の極致ともいえる一本。人が狂っていくのを目の当たりにするのは恐ろしい。ましてここでは結果が先に知らされているのだ。ことの次第を聞いていくうち、夫は目の前にいる妻が見知らぬ他人に見えてくる。観る者はその緊張感と恐怖で息が苦しくなる。やがて真っ暗な背景のなか、森田亜紀がこちらに向かって語りはじめる、そこに誰もいないかのように……。ラストが訪れたとき、私たちは解放され心底ホッとするだろう。劇中の夫も実はそうだったのではないか。