シネマテークたかさき上映情報詳細!

「姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う」+プロジェクトDENGEKI
高崎市シネマテークたかさきで9月29日(土)〜10月5日(金)公開!!
虐待の記憶に苛まれる姉弟の2日間の再生の旅を描いた話題作『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』とプロジェクトDENGEKIの9作品を高崎市シネマテークたかさきで9月29(土)〜10月5日(金)までの1週間限定公開!
連日17:4520:00から2回上映します。

【上映スケジュール】
9/29(土)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』      
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『お姉ちゃん、だいきらい』『ちるみの流儀』
9/30(日
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『わたしの赤ちゃん』『BMG』 
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『正当防衛』『赤猫』
10/1(月)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『静かな家』『赤猫』      
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
10/2(火)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』       
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『赤猫』『わたしの赤ちゃん』 
10/3(水)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『BMG』『静かな家』
10/4(木)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『お姉ちゃん、だいきらい』『ちるみの流儀』
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
10/5(金)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『BMG』『静かな家』     
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』

プログラムの詳細はシネマテークたかさきHPをご覧ください。
シネマテークたかさき http://takasaki-cc.jp/free/next

『ホトホトさま』公式HP:http://hotohotosama.web.fc2.com
『ホトホトさま』公式ブログ:http://d.hatena.ne.jp/projectdengeki
『ホトホトさま』Twitterhttp://twitter.com/#!/hotohoto3ma

■作品情報
『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』


2010年/49分/HDV
監督:大工原正樹
出演:長宗我部陽子 岡部尚 森田亜紀 高橋洋 光田力哉
脚本:井川耕一郎  撮影・照明:志賀葉一 録音:臼井勝 音楽:中川晋介
助監督:冨永圭祐 中島知香 渡辺あい 撮影助手:鎌田亮 佐野真規 黒須健 照明補:広瀬寛巳  照明助手:地良田浩之 松久育紀 今村修邦 立石逸平 録音助手:清水裕紀子 川口陽一 美術:原太一 内藤瑛亮 山形哲生 谷脇邦彦 制作:光田力哉 佐本三国 穴原浩祐 笠原雄一 西出美紀  主題歌「姉ちゃんのブルース」唄:長宗我部陽子(作詞:高橋洋 作曲:中川晋介 )音楽協力:山根ミチル 編集:渡辺あい 大工原正樹 整音:清水裕紀子 制作管理:山口博之 市沢真吾 製作:映画美学校 宣伝協力:カプリコンフィルム(吉川正文) 森宗厚子 名倉愛 星野洋行 予告篇制作:浜田みちる 松浦博直 チラシ・デザイン:船井伊智子 チラシ・ヘア&メイク:増田加奈 チラシ・スチール撮影:猪原美代子

【STORY】
蠱(こ)とは古代中国の呪術である。ひとつの器に小動物や昆虫を入れて殺し合いをさせ、最後に残った一匹には強い呪力が宿るという。
母の葬式を終え、かつて暮らした街をぶらりと訪れた妙子と治は、次第に心に巣食うバケモノ「あいつ」の幻に襲われ始める。
【解説】
過去、心に大きな傷を受けた姉と弟。二人は幼少を過ごした街に戻ってくる。その町並みは、二人の癒えぬ心と呼応するかのように諦め枯れ果ててしまっている。「アイツ」の存在。それは治りかけの傷口に似ている。我を忘れてその醜さを凝視してしまう。治りかけとわかっているのに掻きむしってしまう。二人には、傷口から血が吹き出そうとも、その行為を止めることが出来ないのだ。その同じ「蠱」に喰われた傷だけが、二人の絆になっていることが、どうしようもなく悲しい。しかし、物語は最後に救済を与える。それは血だらけになりながらも、自力でつかみ取った「生」に他ならないだろう。
本作は『赤猫』(2004)の大工原正樹が5年ぶりに撮り上げた新作中篇。脚本は、寡作ながらその質の高い仕事ぶりが注目され続けている井川耕一郎(『西みがき』監督、『赤猫』脚本)。撮影・照明は、一般映画と成人映画を自在に往還し、自主映画もコンスタントに撮り続けているベテランの志賀葉一。録音は、こちらも商業映画から自主映画まで幅広く活躍する『接吻』(監督:万田邦敏)・『害虫』(監督:塩田明彦)の臼井勝。音楽には、映画のサウンドトラック初挑戦のミュージシャン・中川晋介。
主演は、存在感のある女優としてベテランから若手まで多くの監督に愛され、また、コアな邦画ファンからも熱心な支持を得ている長宗我部陽子(『恐怖』『行旅死亡人』)と、「東京乾電池」の舞台にも立つ注目の若手俳優岡部尚(『PASSION』『実録 連合赤軍』)。二人が憎しみの輪廻にはまり込む姉弟を繊細に印象深く演じている。共演は、話題作『へんげ』(監督:大畑創)の公開が待たれる森田亜紀(『赤猫』)と、監督・脚本最新作『旧支配者のキャロル』が完成間近の高橋洋(『恐怖』監督・『リング』脚本)。高橋は、主題歌「姉ちゃんのブルース」の作詞も担当。

【コメント】
たったひとつの仕草、たったひとつの身振りが見えるはずのない過去や記憶、情念や執着を私たちに突き付けてくる。映画の冒頭、母親の遺骨を散骨する姉の身振り、かつて足繁く通った映画館のロビーでありありと記憶を再現しようと体を動かす弟の身振り、残された住居の庭先から、あの品物を取り出すときの手付き。ひとつの身振りがもうひとつの身振りを引き寄せ、響き合い、まるで暗いトンネルの中で叫びと響きが反響し合うが如くに、過去に呪縛された人間たちの苦悩と決別の物語を紡ぎ出していく。そこにこの映画の見事な蠱惑がある。
塩田明彦(映画監督・『どろろ』『カナリア』『害虫』)

大工原さんの映画を見ていつも思うのは、「上手いなあ」ということです。『未亡人誘惑下宿』や『風俗の穴場』のように多くの登場人物が一堂に会する集団劇を、まるで撮影所出身の職人監督のような手さばきできちんと演出しきる人は今の日本に大工原さんしかいないのではないでしょうか。これは大げさな賛辞ではなく、その2本を見れば誰もが納得するほかない事実です。『赤猫』以後は上手さに鋭さが加 わって、演出や編集に無駄がなく、ものすごい切れ味とでもいったものを感じます。例えば『ホトホトさま』の開巻のカットの連なりは、それだけでも上手さのみが実現する映画的な充実に満ちていますが、その一連のカットに差し挟まれるバックミラーに映った姉の顔のカットは、そこにバックミラーの顔の画面を挿入することを選択したことの上手さもさることながら、この画面が、映画の中盤で今度はバックミラーに映った弟の顔の画面と呼応するように仕組まれていて、しかもその画面が物語に決定的に不穏な空気を漂わせるきっかけともなるという憎たらしい構成で、そういうことを今の大工原さんは冷静にやってのけるわけです。大工原さんの映画を未見の人は、なにはさておき、この機会に絶対に見るべきです。
万田邦敏(映画監督・『接吻』『UNLOVED』)

「姉ちゃん、ホトホトさまの蟲を使う」は、混乱の平成に狂い咲きするハードセンチメンタルな姉弟の愛の物語。才人井川耕一郎の描く日本の土着と風土に根ざした扇情的な復讐譚を、確かな技術で映像に焼き付けた大工原正樹の「腕前」が冴え渡る。これぞまさしく「日本映画」の大傑作。是非劇場で!
佐々木浩久(映画監督・『発狂する唇』『血を吸う宇宙』)

姉弟ものに弱い僕は、見ていて泣きそうになった。ホラー映画というかなんとい うか不思議な映画…でも、感動しました。傑作だと思います。
屑山屑男(「TRASH-UP!!」編集長)

姉弟映画というジャンルがあると思う。そのスジには、私もちょいと自負があるが、大工原監督の演出は、さすが、舌を巻いた。この姉さん、相当のんきだ。そして、頓知がきいている!
七里圭(映画監督・『眠り姫』『のんきな姉さん』)

■「プロジェクトDENGEKI」作品情報
『電撃』


2011年/HD/37分
監督:渡辺あい
出演:美輪玲華、安藤匡史、波多野桃子
脚本:冨永圭祐 渡辺あい 制作:地良田浩之 笠原雄一 撮影・照明:星野洋行 録音:川口陽一 中瀬慧 清水絵里加 美術:山形哲生 原太一 衣装:坂本博之 スクリプト:中島知香 助監督:冨永圭祐 内藤瑛亮 山形哲生 佐野真規 撮影助手:神保卓也 照明助手:芳士戸一成 スタントコーディネート:根本大樹 スタント:イチコ 編集:地良田浩之 渡辺あい 整音:中瀬慧 音楽:上松翔一

【STORY】
「愛するタカヒロが浮気をしているーー」。けれどミチコは、いつかタカヒロの愛を取り戻せると信じていた。「だって、わたしのお腹にはあの人の子が宿っているのだもの……」。ミチコは寡黙に、タカヒロの身の回りの世話を焼く幸せを噛みしめていた。しかしある日、タカヒロの妹と称する少女が現れ居候をはじめた日から、ミチコの愛の生活が音をたてて崩れ始める……。
【解説】
渡辺あい、本気の処女作。この時代錯誤な設定に「リアル」をもたらしているのは、間違いなくヒロイン・美輪玲華の圧倒的な存在感だろう。美輪が演ずるミチコは劇中ある職業を身に纏うのだが、その職業がギミックと見えてしまえば失敗のこの映画で、彼女は登場の瞬間からそれが紛れもない現実であることを、そのフィクション性の高い肉体と佇まいで表現してしまう。そして、美輪の時代錯誤を際立たせるはずの波多野桃子も、一見今の少女風を装いながら、現代のそれとは真逆の「速い」芝居で美輪の存在感にたち向かう。そして、二人の女に挟まれる安藤匡史のストイックな受けの芝居が絶妙なアンサンブルを生み出す。これだけ配役に成功している映画が面白くないわけがないのだが、この三人の想いが錯綜するドラマは、大胆な省略をそうとは気づかせないしっとりとした情緒も絡ませながらクライマックスへと向かっていく。いくつもの謎を残しながら。渡辺あいは、ここが映画的な見せ場だというポイントを逃さない。特に3つあるラブシーンの演出は見るものをハッとさせ必見。つまり、運動神経がいいのだ。


『純情No.1』

2011年/20分/HDV
監督・脚本:大工原正樹
出演:長宗我部陽子 北山雅康 猪原美代子 市沢真吾
撮影・照明:山田達也 録音:臼井勝 音楽:山根ミチル

【解説】
主人公の女の見事な思い込みが、終始デタラメな展開を呼ぶコメディ、なのだろうか? 大雑把に言ってしまえば、憎しみがつきぬけてやがて愛に変わるお話な気がするのだが、なんだか違う気もする。タイトルもデタラメなようで、確かにこれしかない気もする。ひょっとしたら大工原正樹に騙されているのかもしれない。ただひとつ言えるのは、主演の長宗我部陽子がデタラメでチャーミングでひたすら楽しい映画であるということだ。


『わたしの赤ちゃん』

2010年/16分/16mm→DV
監督・脚本:磯谷渚
出演:藤井百代 森田亜紀 新井秀幸 福田英史 泉水美和子
スタッフ:上田紳一朗 大坂春菜 大野裕之 小形進之介 奥野達也 神保准 山田剛志 山本豪一 和田格
【STORY】
臨月を迎えた初美は妹の千佳と安産祈願に訪れるが、神社の階段から転がり落ちて死産してしまう。半年後、無事出産した千佳の元へ初美が訪れる。千佳は子供に、初美が自分の子供につけるはずだった、葵という名をつけていた……。
【解説】
姉妹の「痛快」な愛憎劇。15分の尺でドラマを描くには、ちんたらしてられないとばかりに激烈に展開していく。冒頭ほんの1、2分で、姉妹がともに妊娠、姉は流産し、妹の身籠った子の父親を疑い、ドラマの準備は整う。わずか1シーンでこれをやってしまう鮮やかさは、キム・ギヨンを思わせる。
姉妹の関係性を描く芝居場に階段が選ばれたのが必然としかいいようがないならば、その関係が限界まで来たとき、映画はあるべきラストシーンを迎える。絶対にもうこうなるしかないだろう! だからエクスタシーを感じ、時に観客は笑う。それでいいのだ。


『正当防衛』


2010年/16分/16mm→DV
監督・脚本:伊野紗紀
出演:宮田亜紀 佐藤奈美子 森田亜紀 小野島由惟 香取剛 渡部佐枝子 川島玄士 内海敦 原田浩二 菊池直彦
スタッフ:中瀬慧 和泉陽光 今岡利明 神田光 木村栄一郎 小岩貴寛 宝田恵一 西田純 原田浩二 吉田峻

【STORY】
強い決意を胸に市役所を辞め、人材派遣会社の営業に転職した桜井。派遣スタッフ、顧客、後輩そして上司に挟まれた桜井に次々とトラブルが降り掛かる。一人、また一人と社員が去っていき……。極限まで追い詰められた桜井が、自分を守るために求めたものとは。
【解説】
希望を胸に転職した人材派遣会社で高圧的に成果を求める女性上司や規則を守らない派遣スタッフの対処に追われる桜井。やがて上司の圧力に耐えかね辞めていく同僚たち。取り残され、極限状態になった桜井が最後に求めたものは……。
監督・伊野沙紀の実体験を元にしているだけに細部のリアリティには凄みがある。終盤、宮田亜紀演じる桜井が線路沿いを歩く後姿のショットが、彼女の崩壊を伝えて痛々しい。


『静かな家』


2008年/30分/16mm
監督:長谷部大輔
出演:奥ノ矢佳奈 田中洋之助 河野純平 仲谷みなみ
脚本:服部隆志 制作:小川大樹 助監督:後閑広 撮影:安部雅行 録音:青木瑠生 美術:難波和之 編集:真下雅敏

【STORY】
中学1年生の友澤なみき(13)は父親の英也(40)と二人暮らし。ある朝、なみきは英也に告げる。「お父さん、ワタシ、人を殺したい。できれば、お父さんがいいんだけど」
その日からなみきと英也の関係は急速に変化し始める。夏の気配、優等生のレッテル、母の不在、父の失業、そして父への本当の想い……。はたしてなみきは父を殺すのだろうか?
【解説】
父への複雑な思いから放火を繰り返す少女と、娘の変調に戸惑いながらも普通の親子でいようと無理を重ねる失業中の父。綺麗なものとどす黒く汚いものが同居するから面白いのだという長谷部大輔の人間観がここでも随所に炸裂しているのだけれど、不思議とリリカルな印象を残す。セリフを最小限に抑えながら、描写することの喜びに満ち溢れた長谷部版『台風クラブ』。(※数秒間、フィルム原版による画の乱れあり。ご了承ください)


『お姉ちゃん、だいきらい』


2011/13分/DV
監督:佐野真規
出演:久保紫苑 内藤瑛亮 加藤綾佳 川口陽一
撮影:星野洋行 録音:清水絵里加 助監督:冨永圭祐 演出助手:山形哲生

【STORY】
シオンは自分のお姉ちゃんが変な男とくっついたのが何だか許せない。そこで、2人を別れさせようと企む。気弱そうな先輩を無理やり引っ張り込んで、色々とイタズラを仕掛けるのだが…しかし、シオンが手伝いを頼んだこの先輩、こいつもなんだかしょうもない男だった。4人の男女が織り成すほのぼのコメディー。天真爛漫に男を振り回すシオンが魅力的な短編。
【解説】
先輩男と後輩女の童貞コメディ。佐野真規は、自分の魅力に無自覚な(フリをしている)女に振り回されることこそ最高の快楽、と言わんばかりにとことん男をしょうもなく描く。観ながら思わず「とぼけやがって」と呟きそうになるほど天真爛漫な悪女が板についている久保紫苑が魅力的。一方の先輩男を演じる内藤瑛亮が時折見せる、胸がざわめくような暗い眼差しは、この微笑ましいコメディにあって唯一の悪意を添える。そして観た後、はたと気づくのだ。この男、うらやましいぞ、と。


『BMG』


2009年/20分/DV
監督・脚本:松浦博直
出演:伊藤まき 西口浩一郎 岸野雄一
撮影:小原悠人 照明:森内健介 録音:朝倉加葉子 助監督:甲斐靖人 冨永圭佑 音楽:瀬川聡嗣 銃器効果:遊佐和寿

【解説】
決してバカではないけれど夢見がちな男が、暗い瞳の女暗殺者に一目惚れをするファンタジー。フィルムノワールへの遠い記憶に連なる展開と歯切れのよい演出で見るものをぐいぐい引っ張りながら、ラスト、勘違い男の楽天性と女の「信じる心」が唖然とするような奇跡を呼ぶ。
なんといっても、女暗殺者を演じる伊藤まきのファム・ファタールぶりが素晴らしい。


『ちるみの流儀』


2011年/20分/DV
監督:川島玄人
出演:浜田みちる 芳士戸一成 山田達也 川島玄人 神保卓也

【解説】
映画学校のビデオ課題の撮影のために集まった監督カワシマと女優のちるみ。しかし相手役が遅刻していて撮影が始まらない。やっと来た相手役をねちねちと虐め始めるちるみは、すでに劇用の酒でしたたか酔っていた……。抱腹絶倒、連作スタイルのフェイク・ドキュメント。なんといっても自己中心的でワガママ放題の女優・ちるみを演じる浜田みちるの存在感が素晴らしいのだが、時々演技なのか素なのか判らなくなる瞬間がありスリリング。突然撮影現場から逃走する彼女の後ろ姿は必見。


『赤猫』

2004年/42分/DV
監督:大工原正樹
出演:森田亜紀 李鐘浩 藤崎ルキノ 永井正子
脚本:井川耕一郎 撮影:福沢正典

【STORY】
私(李鐘浩)の出張中、妻の千里(森田亜紀)が流産した。風呂の電球を替えようとして、椅子から転落して流産したのだ。
退院後の千里は何もしゃべらず、マンションのベランダからただ遠くを見つめているだけだった。
だが、ある夜、ふとしたことをきっかけに、千里は流産に至る経緯を私に話しだした。
近頃、町で頻発している連続放火事件……。
偶然に聞いた夫が浮気しているという根拠のない噂……。
いるはずのない猫の気配を感じ取り、ネコアレルギーの症状が出たこと……。
夫が学生時代に買った本の中から出てきた一枚の古い写真に写っている女性……。
日常生活で些細な疑念や異変が積み重なっていく中、ある日、千里は放火犯を意味する「赤猫」という隠語を耳にする。
そして、そこから千里の話はとうてい信じられないような方向へと展開してゆく……。
【解説】
ナレーションやモノローグ表現の極致ともいえる一本。人が狂っていくのを目の当たりにするのは恐ろしい。ましてここでは結果が先に知らされているのだ。ことの次第を聞いていくうち、夫は目の前にいる妻が見知らぬ他人に見えてくる。観る者はその緊張感と恐怖で息が苦しくなる。やがて真っ暗な背景のなか、森田亜紀がこちらに向かって語りはじめる、そこに誰もいないかのように……。ラストが訪れたとき、私たちは解放され心底ホッとするだろう。劇中の夫も実はそうだったのではないか。

シネマテークたかさきにて上映決定!


『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIが、シネマテークたかさきにて9/29〜10/5に上映が決定しました。

【上映スケジュール】
9/29(土)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』      
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『お姉ちゃん、だいきらい』『ちるみの流儀』
9/30(日)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『わたしの赤ちゃん』『BMG』 
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『正当防衛』『赤猫』
10/1(月)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『静かな家』『赤猫』      
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
10/2(火)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』       
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『赤猫』『わたしの赤ちゃん』 
10/3(水)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『BMG』『静かな家』
10/4(木)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『お姉ちゃん、だいきらい』『ちるみの流儀』
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』
10/5(金)
17:45〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『BMG』『静かな家』     
20:00〜『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』『電撃』『純情No.1』

シネマテークたかさきHP(http://takasaki-cc.jp/

『ホトホトさま』+プロジェクトDENGEKI全10作品!
おそらく、これが最後の地方上映になると思います。
上映の秋まであと1ヶ月!

名古屋舞台挨拶レポート!(冨永圭祐)

この度、7月14日から名古屋シネマテークさんにて、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIが公開されました。
ゲストに岡部尚さん(『ホトホトさま』主演)をお迎えして、大工原正樹、長谷部大輔(『静かな家』監督)、渡辺あい(『電撃』監督)、磯谷渚(『わたしの赤ちゃん』監督)、中島知香(『ホトホトさま』、プロジェクトDENGEKIスタッフ)、僕の大所帯で初日舞台挨拶にお邪魔しました。

集合場所に着くと、岡部尚さんだけが座っておりました。
「あれ?まだ誰も来てないですか?」「んー、来てないね」
すると渡辺あいからメールがきました。
『道に迷いました。少し遅れます』
さすがです。
渡辺あいは到着しましたが、大工原正樹は一向に来ません。電車が遅れているようです。しかもどうやら渡辺と同じ道の迷い方をしているようです。さすがです。

15分ほど遅れて大工原正樹が到着しました。
「こんなこともあろうかと集合時間を早めにしといたんだよ」
と大工原は自慢気でした。さすがです。

新幹線に乗り込み、いざ名古屋へ。

着きました。

しかし右も左も分かりません。i-phoneを頼りに電車を乗り換え、ホテルにチェックインしました。部屋で休憩していると眠りそうになります。いかんいかんと煙草を吸ってごまかしました。
再びロビーに集合して、夕食を食べにいくことになりました。
おいしいものを探してうろうろ徘徊しました。
あ、映画館です。


伏見ミリオン座さん。こちらの受付の女性にチラシをお渡ししました。するとこの女性は、「みなさんがいらっしゃってるのツイッターで見て知ってました」とおっしゃる。
感無量でございます。お時間あれば、是非よろしくお願いいたします!

考えた末、奮発してひつまぶしを食べることになりました。僕は財布の中身を確かめました。なんとかなりそうです。


いやー、こんな気温と湿気の高い日はビールに限りますなカンパイ!!


うなぎうまいようなぎ

僕は自分の舌の幼さをさんざん馬鹿にされましたが、ひつまぶしのうまさに感動してがっつきました。ほんまにうまい!
うなぎは皮が苦手だったのですが、岡部さんに「冨永くん、皮がうまいよ」と言われ僕は「岡部さん、皮がうまいです!」と言いました。
大工原は前回名古屋で食べたときより鰻の量が少なくなっているとぼやいていましたが、僕の舌は大人の階段を一つ登りました。

我々が飲んで食ってばかりだと思われては困ります!
別ルートで来た長谷部大輔、磯谷渚、中島知香と合流し、いざ名古屋シネマテークさんへ!

着きました。


建物素敵です!雰囲気あります。


名古屋シネマテークの永吉さん。


名古屋シネマテークさんには図書室があり、映画関連の本がずらり。
「あの本は?」というものはほぼ全て揃ってます。戦前のキネ旬まであります。すごい!!心躍ります!!しかももちろん借りられます!!!

上映が始まりました。
本日の上映作品は『静かな家』と『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』です。
『静かな家』は、思春期の少女の秘めた欲望を16mmフィルムで描いた胸がざわめく映画です。何度見ても主演の奥ノ矢佳奈さんの表情にやられます。

上映が終わり、舞台挨拶になりました。

大工原正樹は、岡部尚さんをキャスティングした経緯を中心に、『ホトホトさま』やプロジェクトDENGEKIについて話すうちにもりもり話がふくらんでいきました。
岡部さんにマイクが渡ると、岡部さんから「長かったですね」と鋭いつっこみが入りました。
岡部さんは、名古屋に来られた喜びをお客様に伝え、『ホトホトさま』が撮影されてから息の長い作品になった嬉しさや近年の出演作(桃まつり すき の『さめざめ』や『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』など)についてお話しました。
長谷部大輔にマイクが渡ると、岡部さんと美学校同期である長谷部から「長かったですね」とつっこみが入りました。
長谷部は主演の奥ノ矢佳奈さんについてお話しました。とても印象に残る女優さんなのですが、残念ながら現在はあまり女優業を行ってらっしゃらないようです。
磯谷渚は、本日とは別日に上映される自作『わたしの赤ちゃん』について紹介しました。
渡辺あいも、同じく自作『電撃』について紹介しました。

磯谷・渡辺両名の作品と、大工原正樹の『純情No.1』の3本はBプログラムです!
3本とも突き抜けて笑える作品となっております。Aプログラムとはまた違った魅力のラインナップです!名古屋の皆様よろしくお願いいたします。

名古屋シネマテークHP(http://cineaste.jp/

僕は今回も何故か登壇することになり、やっぱり「え、何話せばいいんですかね」となりましたが、せっかくなので拙作『乱心』についてお話させていただきました。

その後、ロビーにてサイン会。

上映が終わり、永吉さん、お客様たちと台湾料理屋で飲みました。
岐阜の映画作家・鉄砲玉のオオノさんが岐阜からなんと5人もの映画好きの女性を引率して劇場に駆けつけてくださっていたので、そのまま呑み会に。
名古屋在住の元映画美学校生・三島さんの姿もあります。


ここ、とてもおいしいです。おすすめは結構辛いですが台湾ラーメン

その後、オオノさん、三島さんたちとお別れして、永吉さんと2件目へ。

いい時間になったのでホテルへ帰ることになりました。
大工原正樹は飲めば飲むほど覚醒していく人なので物足りなそうでしたが、本当にいい時間だったので帰りました。

おやすみなさい。

名古屋シネマテークでの上映は残すところ後2日、7月20(金)までです。
今日19日(木)はBプロ(『電撃』、『わたしの赤ちゃん』、『純情№1』+秘密短編)
明日20日(金)はAプロ(『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』、『静かな家』)
となっております。
上映スタートは連日20:50、終映は22:10頃の予定。
名古屋近郊で未見の方はぜひ名古屋シネマテークへお越しください!

名古屋シネマテーク7/14(土)初日舞台挨拶のご案内

いよいよ名古屋シネマテークでの『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIの上映が迫ってまいりました!

初日の7月14日(土)に出演者・監督による舞台挨拶を行います。
登壇者は『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』主演の岡部尚さん、大工原正樹監督。
さらにプロジェクトDENGEKIより渡辺あい監督(『電撃』)、磯谷渚監督(『わたしの赤ちゃん』)、
長谷部大輔監督(『静かな家』)、冨永圭祐(『電撃』脚本、『ホトホトさま』助監督)のメンバーです。

にぎやかな舞台挨拶になりそうです。
名古屋の皆様、ぜひご来場ください!

名古屋シネマテークでの上映は連日20:50〜です。Bプロでは毎回、7分の短編の秘密上映もあります。

7/14&16&18&20
『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』
『静かな家』(計79分)

7/15&17&19
『私の赤ちゃん』
『純情 No.1』
『電撃』(計79分)
(他、覆面作品上映もあり!)

入場料(当日券のみ)
 一般1500円 大学生1400円 中高生・会員1200円
 ※期間中リピーター割引 一般・大学生200円引き

名古屋シネマテークHP http://cineaste.jp/l2/2100/2147.htm

ドイツ・フランクフルト遠征記5(冨永圭祐)

5月6日(曇り)
おはようございます。
僕です。最近友人からブロガーと呼ばれております。

ベッドから起き上がると一枚の手紙を踏んづけました。
大工原・渡辺は映写チェックに行ったとのことでした。
手紙は5秒後に自動消滅しました。
僕もひとまずボーっとしてから会場に向かいました。
チェックは特に問題なく終わり、オリバーさんと合流しました。

今日はマイン川クルージングです。
大工原正樹は初めてマイン川を見た日から「あの船乗りてーなぁ」「明日乗ろう」「乗る時間なかったなぁ」「時間チェックしとくわ」「明日こそ乗りてーなぁ」と言い続けておりました。大工原正樹は船が好き。

船に乗り込みました。


大工原「いい…。やはり、船はいい。速度がいい」

船はゆったりとしたスピードでレーマーの街沿いを流れていきます。
気持ちいいです。


ざわ…ざわ…

船を下りるとお昼にいい時間でした。
オリバーさんと別れた我々は、レーマーのカフェ通りに向かいました。
あ、なんか撮影してます。


え、キャメラそれで大丈夫?固定できてる?車動かしたらふっとんじゃうよ!
と我々はいらぬ心配をしました。なんとなく自主映画感が漂っています。

カフェ通りについた我々は店を探しましたが、チェーン店以外けっこう閉まっております。
ドイツは日曜日はきっちり休むようです。人通りも少ない。日本もそうすべきですね。
先日来た時は、商売っ気がありすぎて入らなかったレストランに入りました。


渡辺あいは、フランクフルト名物アスパラを、僕とMさんはミートローフを、大工原正樹はソーセージ盛り合わせを頼みました。
ギターおじさんが近くに来て急に演奏を始めました。
ぼくたち観光客丸出しです。
ちょっと値が張りましたがおいしかったです。
あ、なんかお腹減ってきましたね。

今日こそ名物おばさんの作るソーセージを買おうと思ったら、市場閉まってました。
もろもろお土産を買いに色んな店に立ち寄り、ハーゲン・ダッツも食べて教会にも行ったので思い残すことはありません。ボッケンハイムに戻りました。

いよいよ『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKIの上映です。
心配なのは、同時間帯にNIPPON CINEMA部門で『モテキ』が上映されることでした。
2階の会場前は人があふれすぎて通りにくいほどでした。

「やっぱり…」と思いながら、NIPPON VISIONS部門会場のある3階へ上っていきました。
会場に入ると、


埋まっております!すごい!!
簡単に上映前あいさつをし、上映が始まりました。
上映順は、『わたしの赤ちゃん』(磯谷渚監督)、『電撃』(渡辺あい監督)、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(大工原正樹監督)です。

『わたしの赤ちゃん』は開始1分ぐらいで事件が起きます。展開が激烈です。
そこですぐに笑いが起きました。つかみOKです。
その後も強烈なセリフの応酬でこれでもかとばかりに展開していくのですが、うけてます!うけてます!
そして衝撃的なラスト。
今までで一番の笑いが会場を包みました。映画のラストシーンとも相まってなんとも心地よいエクスタシーを感じました。

次は渡辺あい監督の『電撃』です。『電撃』も、前半15分に濃密なドラマ展開が詰まっています。サスペンスフルかつ、笑える映画です。
魅入ってます!笑ってます!美輪玲華さん演じるミチコの強烈なキャラクターは確実にドイツのお客様にも伝わっています。
そしてこちらも最後、『わたしの赤ちゃん』に勝るとも劣らない衝撃を与えます!
またもや、会場が笑いに包まれました!
僕は、思わず「やった!」と思いました。

いよいよ大工原正樹監督『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』です。
70年代歌謡曲調の主題歌と共に、姉弟が寂れた街へ帰ってきます。懐かしさと禍々しさが共存する風景に観客も誘われていきます。
先程までとは違った雰囲気で、お客様が魅入っています。
企画段階からこの作品に関わってきましたが、今日ほど姉弟の姿にぐっときたことはありませんでした。
長宗我部陽子さん、岡部尚さんという役者さんを、フランクフルトの皆さんにも覚えていただけたのではないでしょうか。


上映後Q&Aの一幕


お客さんに許可を取って記念撮影

会場を出ると、両名はお客様に個人的に話しかけられていました。
大工原正樹は、「君の映画が大好きだ」と言われたそうです。
嬉しそうです。
渡辺あいは、なんと美輪玲華さんとお知り合いだという方に出会いました!
数年前のニチコネで美輪さんと知り合ったそうです。
ドイツに友達ができました。

数日に渡るニッポンコネクションも閉会の時がきました。


舞台上に上がりきれないほどの方々が、このニッポンコネクションに関わってくださっていたのです!

ニチコネ・スタッフのみなさんと打ち上げ!


隈元監督『sugar baby』、眞田監督『しんしんしん』、飯塚監督『ENCOUNTERS』と「おれたちがここに来た証を残してやるぜ!」とばかりに、置いてあったノートに本当に残してやりました。


飯塚監督から拉致した『ENCOUNTERS』のスーパー怪物くんを愛でております。
本当に可愛いやつです。

先ほどのノートへの落書きの流れで飯塚監督の絵を描いていたら、渡辺あいがダメ出しをしてきました。
そこで、Mさんと僕による渡辺あい似顔絵対決が催されました。
相手は渡辺あいの大学時代からの長いつきあいです。強敵です。
渡辺あいが変な顔をしたので「そのまま!」と動きを封印しました。
Mさんと僕の真剣なまなざしが渡辺に注がれます。
渡辺は引きつってぷるぷる震えています。
この緊張感。ここはMさんと僕の鋭い視線、描いている手元、変な顔で震える渡辺の順でカットバックでしょう。

「出来た!」
二人同時にノートを開きました。
二人とも渡辺に怒られました。
そこで渡辺先生は、僕たちに「今度はお互いの顔を描いてみなさい」と指示しました。

僕とMさんはお互いに真剣な視線を交わしつつ、書き上げていきます。
再び凄まじい緊張感です。視線と視線がぶつかるところに真空が作り出され、全てが吸い込まれそうです。
実は、Mさんと会うのはこのフランクフルトが初めてではありません。
美学校時代にビデオ課題で共演したことがあるのです。
「まさか、遠いドイツの地でMさんの似顔絵を描くことになるとはな。ふふ、人生ってのは読めないものだ…」
Mさんも同じことを考えていました。

「出来た!」
二人は同時にノートを開きました。
「うむ、二人ともよく特徴を捉えておる」と渡辺先生にほめられました。

なおプライバシー保護のため、描かれた絵の写真はございません。
フランクフルトのどこかに行けば見られるかもしれないですね。

そうこうしてるうちに、会場から移動の時間になりました。
今度はバーに行って二次会です。


照明がいい感じのお店でした。


『ENCOUNTERS』の飯塚貴士監督と。


左から、飯塚監督、僕、大工原正樹、本田隆一監督『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』in 喫煙ルーム。飯塚監督は吸わないのですが、無理矢理つきあってもらいました。大体飯塚監督に絡んでいました。飯塚監督申し訳ないっす!

一方その頃、渡辺あいは店に普通のお客さんとして来ていたおじさんに「娘のようだ」といたく気に入られておりました。

宴会は深夜まで続きました。
大工原正樹は先にホテルに戻り、僕たち3人もその後しばらくして店を後にしました。

今年のニッポンコネクションもこれにて終了です。
主催者、スタッフのみなさん、出品者のみなさん、本当にお疲れ様でした。
おやすみなさい。

名古屋セレクション作品予告編!

名古屋で上映する各作品の予告編です!

『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(大工原正樹監督)予告編

(*最後に東京上映時の情報がついてしまったままなのですが、名古屋シネマテークでの上映です!)

プロジェクトDENGEKI予告編

(名古屋では『電撃』『静かな家』『わたしの赤ちゃん』が上映です。こちらも最後に東京上映時の情報がついてしまったままですみません)

『静かな家』(長谷部大輔監督)予告編

(今回、名古屋セレクション上映にむけて新たに作成されました!主演の少女・奥ノ矢佳奈さんの魅力!)

『わたしの赤ちゃん』(磯谷渚監督)予告編

(ハイテンション&トゥーマッチな過剰さの先に開けてくるラストシーン!)


7/14&16&18&20
『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』
『静かな家』(計79分)

7/15&17&19
『私の赤ちゃん』
『純情 No.1』
『電撃』(計79分)
(他、覆面作品上映も予定?!)

入場料(当日券のみ)
 一般1500円 大学生1400円 中高生・会員1200円
 ※期間中リピーター割引 一般・大学生200円引き

名古屋シネマテークHP
http://cineaste.jp/

『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』作品評(阿部嘉昭)

 開巻早々の黒画面で、傷のような縦棒が一本、無造作に現れる。それがやがて二本になり三本になる画面が出てくると、映画内に小分けされている章の序数だという了解も成立してゆくのだが、ご覧のようにそれはローマ数字ではなかった。縦棒の数でのみ数値がただ表象されるから、それがやがて十本を超えだすころになると、定着時間の短さもあって数値が判読不能になる。本当に数値は場面を追うごとに加算されているのだろうか。たとえば「13」などヤバい数値が欠落しているのではないか。何より、場面転換を必要以上に小分けしているこの章数の介入が観客を煩悶させる。増殖と把握不能性。あるいは交換可能性の予感。それは「時間」と「虫」のもつ属性をも暗示してはいないか。ともあれ、棒が20本出る黒画面を介したあと、この「気持ち悪い映画」は終わる。

 黒沢清の『ドッペルゲンガー』が「ジャンル」を横ズレしてゆく運動の破調をもっていたのと同様のことが、この大工原正樹監督『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱〔こ〕を使う』でも起こる。最初は、廃墟性が侵食している土地・木更津への姉弟の「再訪物」かと予想していると、それが「あいつ」を重心に置いた、相姦臭のつよい姉弟の「トラウマ物=心理映画」に変貌しだし、やがては真正の怪奇映画となって、「否、これは哲学的な時間論映画ではないか」という衝撃すら生まれる。この瞬間に映画は無慈悲に閉じられてしまう。途方に暮れつつも、そのジャンル的な軸にたいする「逸脱」の運動こそが、作品の気味悪さの正体でもないかという感慨が走る。

 細部は「消えること」「出現すること」をまずは丁寧に織りあわせる。緑魔子の唄う「やさしい日本人」をおもわせる曲調でヒロイン自らの唄う、高橋洋作詞/中川晋介作曲の主題歌が冒頭流れるが、その最初の「終わりの歌が聴えてくるよ」の「聴えてくるよ」で、縦構図中、姉弟のクルマが画面奥行から近づいてきたときに、もともと「出現」の強度も図られていたのだった。

 姉弟が母の勤めていた旅館が廃墟になったのを確認したのち(ここで弟が「いつ潰れたのかな? 10年前――15年前?」と呟くことから、姉弟の再訪が少なくとも15年ぶりということがわかる)、ふたりの赴いた映画館の看板は「Cen_ral Bowl」と「t」が欠落していた。このことから、「消滅」に注意しろという画面的伝令が生ずるのだが、姉は弟が映画館を切り盛りしている旧知の女性と話すあいだに「消える」(男子トイレにいた)。あるいは往時の三年をふたりとその母が暮らした文化住宅に行き着くと、建物内を覗き込む姉の目の前に、いつの間にか住宅に入り込んでしまった弟が窓ごしに顔を「出す」。話題が「あいつ」に及ぶと、弟は忽然と押入れのなかに「消える」。極めつけはふたり――長宗我部陽子岡部尚の青春期を知る隣人の高橋洋が画面「退場」するときの、速さとカット割の異常だろう(それまでは成瀬巳喜男ばりの角度と遠近の変化を組み込んだ丁寧なカット割が遵守されていたから唐突感もいやましになる)。

 これら一連で三回、弟にとっての姉の「往年」の雰囲気を醸すためか、長宗我部の衣裳がリアリズムを飛び越えてセーラー服になるが、こうしたコスチューム変容遊戯はその後の展開では「消える」。それでセーラー服は人の出現/消滅を鮮烈に印象させるために使用された「時間論的なもの」という、一種の恐怖感に襲われる。これは「出鱈目」が「整然としていること」の脱臼感というべきかもしれない。いずれにせよ観客は章数を把握不能であるように、作品のジャンルを――リアリズムの濃淡法則を掌握できず、この時点ですでに「恐怖寸前」に置かれるのだった。

 「あいつ」の語がこれほど乱舞される映画はおそらく大島渚『東京戦争戦後秘話』以来だろう。ただ「あいつ」の語すらやはり「出現」したのだった。岡部が「うろうろしている奴」「あの男」「バケモノ」と三様に表現した対象が、やがて長宗我部によってはじめて「あいつ」と三人称化された経緯に注意しなければならない。三人称の恐怖。ラスト直前、いくら殺しても殺しきれないという「あいつ」の性格が定位されたのち、「あいつを憎めば憎むほどあいつに似てくる」自分たちの悲劇性が語られ、「あいつ」が「バケモノ」とふたたび換言されて姉弟の存在に影を落とす。

 姉弟の旧地来訪が二日に及び、気味の悪い夜の旅館場面となる。小津『晩春』を想起させるように姉弟の蒲団が並び敷かれる。眠る弟への俯瞰ショット。悪夢にとりこまれた弟が金属音のような呻きを洩らす。物音に起きた姉と過去の述懐がなされたあと、姉が浴衣の帯で、弟と自分が無限の恐怖へバラバラに墜ちないよう自分たちの腕を結ぶ。市川崑『おとうと』の引用だが、帯で互いを結ぶ動作とは入水前の男女のそれともおなじだ。もともと旅館内で姉が弟にたいして「結ぶ」動作はヤバいのだ。成瀬『乱れる』高峰秀子加山雄三の指に「勘定紙縒」を「結んだ」からこそ、ふたりはあの映画の最後で、相互の生死を違えながらも「象徴的心中」を結果したのではなかったか。障子に朝焼けの紅い光が映るときの吉田喜重『鏡の女たち』のラストにも似た無時間性。見落としてはならないのが、蒲団を並べたふたりの枕元に「蟹の図像」が存在していた点だ(設えではなく、室内の畳にもともと存在していたものだという)。甲殻類の内部空洞と、虚無の反響性。それがこの作品の中心主題「蠱〔こ〕」へと「ひびいてゆく」。

 蠱――蠱毒とはなにか。ウィキペディアなどを引けば、こうある――《蠱毒とは、古代中国において用いられた、虫を使った呪術のこと。「器の中に多数の虫を入れて互いに食い合わせ、最後に生き残った最も生命力の強い一匹を用いて呪いをする」という術式が知られる(この場合の「虫」は昆虫だけではなく、クモ・ムカデ・サソリなどの節足動物、ヘビ・トカゲなどの爬虫類、カエルなどの両生類も含む)》。同属共食いののちの最終覇者が破壊的呪力を得る――というのは一見「超人思想」とも共鳴しそうだが、問題は同属をそのように「配剤」する「神の手の悪意」と、その結果としての「時間の極度の抽象化」のほうではないのか。

 井川耕一郎の脚本は「ひよめき」「ファントム」「赤猫」といった「綺語畸想」から怪奇をつむぐのを常とするが、十五年以上前に「蠱」を(カルピスの)瓶に詰めるというかたちで成立した弟の呪術器が宿泊の翌日の文化住宅再訪で「掘り起こされ」、やがては瓶の空間性が木更津近郊の隧道へと象徴的に転位し、さらには「蠱」の同属性が姉弟、さらに「あいつ」のあいだで形成されるにおよび、怪奇性も頂点に達してゆく。隧道内での一旦の「あいつ」の轢殺、手潰し、土葬ののち、なぜか時間が「反復」して二度目の隧道場面となるとき、瓶のなかに満載された「蠱」がクルマの後部座席でガサリと動く気味悪さ。旅館の障子に予告されていた赤光に隧道内はさらにみちあふれ、姉は隧道内へ急行した。そこで「出現」する、「あいつ」と懲罰される弟の、構図と動きの気味悪さも忘れられない。

 彼らは無限にこの「共食い」をおこなうのか。とすれば、もはや彼らが時間を反復させているのではなく、時間自体が反復されてそこに彼らがたえず召喚されているというべきなのだ。その証拠こそが、時制を度外視して映画が自らを「反復」したようにみえるラストシーンだろう。しかしそれが「愛の場面」でもあるという逆説こそがすばらしい(ぜひ実地検分を)。

 ひとつ、つけくわえるなら、この作品はすべて人物の「動作(行為)」しか撮っていない点も見事だった。

阿部嘉昭(評論家・詩作者・北海道大学准教授)

(『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』+プロジェクトDENGEKI劇場バンフレットに寄稿いただいたものを再録しました)